元U15侍戦士は強豪より公立校へ「甲子園が特別な場所だとは思わない」 (2ページ目)

  • 高木遊●文 text by Takagi Yu
  • photo by Takagi Yu

 清水はそうキッパリと言い切った。甲子園出場の可能性が低くなることも厭わなかったと、力を込めて続ける。

「みんな甲子園は特別な場所だと言いますが、僕にとってはひとつの球場であって、とくに意識はしていないです。甲子園に出て活躍できればいいと思いますが、甲子園に出場したことを誇るだけの人生にはしたくないですし、思い出づくりのために高校野球をしているわけでもありません。高校野球はプロへの通り道だと思っています」

 安中総合の環境も、清水の成長をあと押しした。

 チームを率いる吉田省吾監督は就任7年目の36歳。県下有数の進学校である高崎高から北海道大に進んでプレーした。吉田監督が指導するうえでとくに大事にしていることは、選手が「やりたいからやる」という気持ちにさせることだという。吉田監督は「脳の健康状態がいいように」という言葉で表現する。

 そして投手の指導については「僕はおもに外野手でしたし、上等な素材に調味料をぶちまけても仕方ない」と、トレーナーの吉田稔彦氏(ウゴケル高崎所属)に一任した。

 中学時代から清水を見てきた吉田氏は、情報を収集する力、自らを認識する力は当時から際立っていたと話す。

「(清水)惇は自分の体をよくチェックしていますし、情報収集もよくしているので、自分を客観視できるんです。3年間ケガをせず、平均球速も上がりました。これから体も締まっていくと思うので伸びしろは十分です」

 安中総合を選んだ際には、「そこに行ったら大学進学はできないよ」など、さまざまな雑音も聞こえてきた。それでも投手育成に定評がある関東の大学への進学を決めるなど、清水は着実に成長したことを証明してみせた。

「人の言うことに耳は傾けますけど『本当にそうか?』と疑問を抱いた時は、自分の気持ちを信じてやったほうがいいなと思いました。『本当にここに行きたい』という気持ちがあるのなら、自分の行きたいところに行くべきです」

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