ハンカチ世代で「MLBに最も近かった男」。挫折を経て歩む指導者の道 (3ページ目)

  • 高木遊●文 text by Takagi Yu
  • photo by Takagi Yu

「最後まであきらめずに指導しつづけてくれた竹田利秋監督(現・国学院大総監督)や、自分がマウンドに上がった時に声をかけてくれる仲間の思いに応えたいと、ずっとやってきたんです。青学に勝った時は、1学年上の先輩たちが一緒に走ってくれたり、自主練習にもたくさん付き合ってくれて......。自分が勝てたという安堵の気持ちより、そうやって助けてくれた人たちの顔が思い浮かんで涙が止まりませんでした」

 大学卒業後は社会人野球のかずさマジックでプレーしたが、5年間で全国大会の登板は1イニングのみ。村松の世代は、高校の同級生である坂本をはじめ、田中将大(ヤンキース)、前田健太(ツインズ)、會澤翼(広島)ら、錚々たる顔ぶれが並ぶ。そんな同期たちの華々しい活躍に刺激を受けて「プロを目指していました。鼻で笑われようと、引退する時までは......」と思い続けたが、叶うことはなかった。

 2015年に現役を引退すると、自宅からも近く、同じ国学院大OBの島田孝行氏が監督を務める清和大のコーチに就任。平日は会社員として働き、休日に部員たちの指導にあたっている。

 指導者となった今、「一番うれしかった」と振り返る、最後の白星を挙げた時の気持ちを選手たちにも感じてほしいと願う。

「今の学生には、仲間の大切さをもっともっと大事にしてほしいんです。野球はひとりではできない。いろんな人のサポートがあるから、試合に出るメンバーは何の不自由もなく練習に打ち込めるんです。そういう技術以外のところをもっと感じてほしいんです」

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