センバツ21世紀枠、平田高・植田監督の方針転換は「私立に勝つため」 (4ページ目)

  • 井上幸太●文 text by Inoue Kota
  • photo by Inoue Kota

 そして2016年夏、植田が築き上げた新しい野球が結実する。

 6試合を戦い、23個の犠打と18回の盗塁を記録して、島根大会優勝。準々決勝では、9回にサヨナラスクイズで益田東を下すなど、小技を効果的に絡めた攻撃で、出雲にとって創部初の甲子園出場を果たした。

 県内公立校の夏の甲子園出場は、2004年の浜田以来12年ぶり。長く閉ざされていた扉を、植田の野球がこじ開けた。

 甲子園出場を置き土産に、2017年春の人事異動で母校である平田へ。異動時の心境と経緯をこう振り返る。

「2012年から出雲で監督をして、甲子園に出た年が5年目。まだ出雲にいることもできる年次でもありましたが、自分の年齢を考えると、次の異動が母校に戻る最後のチャンスかもしれない。下級生の選手たちも残っていて、心苦しい思いもありましたが、転勤希望を出させてもらいました」

 平田側の異動のタイミングも重なり、転勤希望は通った。恩師との約束である「母校の監督として甲子園に行く」という目標に挑戦することとなった。

 出雲時代に構築した緻密な野球に磨きをかけ、2018年春に県4強、同年秋は県準優勝で中国大会に出場。そして、昨秋は2年連続の県準優勝、中国大会でも初戦突破。着実に結果を積み上げ、就任丸3年で甲子園出場切符を掴んだ。

 現チームは、「打者が走者の進塁を助け、走者は塁上から相手バッテリーを揺さぶり、打者を助ける」組織的な攻撃と、「バッテリーの配球に合わせて、野手陣がシフトを敷き、アウトを奪っていく」守備を信条としている。攻撃は"走打連動"、守りは"攻めの守備"と名づけ、チームに浸透させている。植田が言う。

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