履正社の日本一で始まる新2強物語。真の王者へ「ある勝利」が必要だ (2ページ目)

  • 谷上史朗●文 text by Tanigami Shiro
  • photo by Okazawa Katsuro

 毎年、夏の大阪大会が始まる前、各校の戦力分析をはじめとした大会展望を書かせてもらっている。ここ数年は決まって"2"についての原稿を書いてきた。2強とは、大阪桐蔭と履正社のことだ。しかし今年は、"混戦の大阪"をテーマにした。つまり、この2強が例年ほど圧倒的ではないということだった。

 事実、春の大阪大会は大阪桐蔭が5回戦で近大付に敗れ、履正社も準々決勝で大商大に屈した。この2強が春の大会でベスト4に残らなかったのは、じつに12年ぶりだった。

 春の時点で、履正社はエース・清水大成に続く2番手以降の投手不在が課題だった。一方の大阪桐蔭は、昨年春夏連覇を達成したチームのほとんどが3年生で、下級生はわずか2人しかいなかった。その結果、試合の随所で経験不足を露呈し、夏までにどこまでチーム力を上げてこられるかが最大のテーマだった。

 いつもと違う夏の雰囲気は十分にあったが、大阪の夏を制したのはやはり2強の一角、履正社だった。打線が沈黙する試合もあったが、選手個々の能力の高さは屈指。清水に続く2番手も2年生の岩崎峻典が急成長し、チーム力は春とは比べ物にならないほど上がっていた。

"大阪2強"----関西圏では誰もが納得のフレーズだが、それ以外の野球ファンや関係者からすると"2強"の表現に違和感を持つ人も多いのではないだろうか。理由は明快で、両校の間に高校野球の集大成である夏の結果に大きな差があったからだ。

"夏の結果"を指すものは2つある。1つは甲子園での結果で、もう1つは夏の大阪大会。もっと厳密に言えば直接対決での結果である。

 まず履正社だが、センバツは8回出場しており、2014年と2017年は準優勝を果たすなど、しっかりと結果を残している。ところが夏になると、昨年までの時点では3回にとどまり、最高成績も2010年、2016年の3回戦である。

 対して大阪桐蔭は、これまで夏は10回の出場を誇り、うち日本一は5度(春を含めると8回)ある。しかも、夏の大阪大会での直接対決も大阪桐蔭が11連勝中と圧倒しており、両校の差は歴然だ。

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