検索

ついに小学生年代で球数制限。
野球界の未来が変わる分岐点となるか (2ページ目)

  • 粂田孝明●文 text by Kumeta Takaaki
  • 共同写真企画●撮影

「プロ野球や高校野球と違って、学童野球(小学生年代の野球)の監督さんの多くがボランティアでやっているんです。善意の中でやっていて、自分の指導論があるわけです。勝利のために良かれと思ってやってきた指導を、いきなり変えるというのは簡単なことではありません。ただ、勝つことも大事ですが、それだけでは選手がケガをしてしまいます。

 我々は、過去5年間の(マクドナルド・トーナメント全国大会の投球数、登板数などのあらゆる)データをまとめ、さらに昨年11月に3年間かけて追跡調査した資料が出そろいました。それを見て、(球数制限を)反対されても決断しなくてはいけないなと思いました」

 全日本軟式野球連盟は、専門家の意見を聞きながら、医師による追跡調査を実施した。複数年にわたり、小学生球児の健康状態をチェックすると、驚くべき事実が浮かび上がってきた。2018年に開催された第10回U12アジア選手権大会の日本代表15名のうち、10名が肘や肩に障害の症状があった。

 また、17年に徳島県で開催された地方大会では、41.2パーセントの投手が肘や肩の痛みを訴えていた。徳島ではこの結果を受け、翌18年、投球数を70球に減らしたところ、肘や肩の痛みを訴えた選手が32.3パーセントに減少した。その他、80~100球で投手は疲労を感じ、約40パーセントの選手が過去に故障を経験していたというデータもあった。

 これらの結果を総合的に判断し、1日の投球数に上限を設けた。宗像氏はこう続ける。

「専門家の中には1日50球という意見もあります。ただ50球に制限してしまうと、1試合で最低でも3人のピッチャーを作らなければならない。指導者にとってすぐにピッチャーを複数人作るというのは大変なことなんです」

2 / 4

厳選ピックアップ

キーワード

このページのトップに戻る