鶴岡東が好投手を次々攻略。
「庄内の暴れん坊」打線は多彩な打者が揃う

  • 菊地高弘●文 text by Kikuchi Takahiro
  • photo by OHtomo Yoshiyuki

「フライアウトはダメなので、強いゴロを打とうと思っています」(山下陽生)

「甘いボールは1打席に1球あればいいほうなので、それを確実に強く仕留めることを考えています」(大井光来)

「あまり考えずにとにかく振る。来た球を打つという感じです」(丸山蓮)

 これは同一チームのクリーンアップが語った、打撃への考え方である。この言葉だけでもそれぞれのタイプの違い、幅の広さを感じてもらえるだろう。

 高校球界には強打のチームが数多く存在する。そのなかでも、鶴岡東(山形)ほど多種多彩な打者を揃えたチームは珍しいのではないか。

習志野戦で2打席連続本塁打を放った鶴岡東の丸山蓮習志野戦で2打席連続本塁打を放った鶴岡東の丸山蓮 今年6月、和歌山東のエース右腕・落合秀市が投げると聞いて、立正大グラウンドで行なわれた鶴岡東との練習試合を見る機会があった。

 落合は最速148キロを計測し、潜在能力の高さは超高校級の評価を受ける逸材である。そんな落合に、鶴岡東は初回から猛打を浴びせた。無死満塁から4番・大井の鋭く振り抜いた打球はレフトスタンドへ。いきなりのグランドスラムで4点を奪うなど、落合が投げた7イニングで11安打、8得点を奪った。

 印象的だったのは1番から9番まで、とにかく強いスイングができることである。とくにクリーンアップは個性的だった。3番の山下は柔らかいバットコントロールで右へ左へ安打を量産し、4番の大井は確実性と長打力を併せ持ち、5番の丸山は粗も目立つがインパクトの爆発力は超高校級。さほど知名度はなくとも、間違いなく全国でも指折りの強打線だと確信した。私の脳内には「庄内の暴れん坊」のフレーズが躍っていた。

 そして今夏、鶴岡東は甲子園(全国高校野球選手権)で快進撃を見せている。初戦では好投手・香川卓摩を擁する高松商(香川)に6対4で勝利。さらに2回戦では春のセンバツ(選抜高校野球)で準優勝した習志野(千葉)を9対5で破った。

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