佐々木朗希だけじゃない。甲子園に出られなかった多士済々の精鋭たち (2ページ目)

  • 安倍昌彦●文 text by Abe Masahiko
  • photo by Nikkan sports、Inoue Kota

 県下屈指の進学校だから「甲子園は厳しいだろうな......」と思いながら、好投手がいるため、つい甲子園で投げる姿を想像してしまう。茶谷哲兵(3年/右投右打)がエースを務める西宮東高校は、甲子園から徒歩5分ぐらいのところに位置し、これまで甲子園出場経歴がないことから「甲子園に一番近く、遠い高校」として知られている。

 茶谷は、サイドハンドから140キロを超すストレートを投げ込む本格派だ。これまでサイドハンドの高校生を何人も見てきたが、これだけ強い球を投げる投手は初めてかもしれない。

 春の県大会で好投した投手が、夏に打ち込まれるというシーンはこれまで何度も見てきた。夏は打者の振りも鋭くなり、しかも春に好投したとなれば当然マークも厳しくなる。それなのに茶谷は、春に続き夏も自慢のストレートで打者から面白いように空振りを奪っていた。ボールのキレはもちろんだが、茶谷という投手はただ捕手に向かって思い切り投げるのではなく、しっかり相手を見ながら投球できるという技を持っている。これは教え込んでもできるものではない。

 茶谷の卒業後の進路だが、志望は「国公立の工学部」と聞いている。4年後、再びプロ注目の投手として注目されているのか。これからの成長が楽しみだ。

 九州国際大付の下村海翔(かいと/3年/右投右打)は、福岡大会準決勝でセンバツベスト8の筑陽学園に0対3で敗れた。下村は2点リードされた5回からリリーフとして登板。それまでイニング数を上回る三振数を記録しており、常時145キロのストレートとタテ・ヨコ2種類のスライダーは、わかっていても攻略困難なボールだ。

 下村はストレートのリリースの瞬間、ボールを人差し指と中指の2本で押し込んでいるのだが、この技術は昨年夏の甲子園でフィーバーを巻き起こした金足農の吉田輝星(現・日本ハム)を彷彿とさせる。

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