「なんで練習せなアカンねん」→急成長。高校BIG4に匹敵する逸材出現 (4ページ目)

  • 菊地高弘●文 text by Kikuchi Takahiro
  • photo by Kikuchi Takahiro

 抽象的な言葉に聞こえたので突っ込んで聞いてみたのだが、かえって落合を困らせてしまった。

「監督さんがよく言っているんですけど、難しいですよね......人間力。学校に落ちているゴミを拾うとか、スルーしても誰か別のヤツが拾うやんと思うこともあるし......」

 そんな本音をのぞかせた後、落合はこう続けた。

「でも、口ではうまく言えないけど、直感で『人間力が自分に足りてない』ということはわかるような気がします」

 その言葉は、嘘がつけない落合なりの誠意のように聞こえた。

 米原監督に「人間力」について尋ねると、こんな言葉が返ってきた。

「自分で考えて行動すること。それが人間力と自立につながっていくと私は考えています。指導者に言われて初めてやるのではなく、自分から進んで動けるか。それがこのチームのテーマなんです。指導者もガミガミ言うのではなく、ヒントを与えながら。そうやっていくうちに、この子たちもちょっとずつ自分で考えられるようになってきたと思います」

 ポテンシャルは申し分ない。だが、内面の完成度は「BIG4」とかけ離れていると言わざるを得ないだろう。精神的な幼さは、落合の評価を下げる危険もはらんでいる。

 しかし、それを「伸びしろ」ととらえる球団も必ずあるはずだ。米原監督は言う。

「3年間かけて、この子なりに成長してきました。考え方に幼さはありますが、それを隠すつもりはありませんし、スカウトの方にもお伝えしています。『本当に大丈夫ですか、あいつの面倒を見られますか?』と」

 スカウトの心証を少しでもよくしようと、ドラフト候補のプラス面しか明かさない指導者もいる。だが、プロに入ることはゴールではない。米原監督の言葉は本気で落合の将来を心配するがゆえの愛情と、「プロが手塩にかけて育てたら大化けするかもしれない」という期待がふんだんに含まれている。

 落合秀市という原石が弱肉強食の世界で輝けるかは、まだ誰にもわからない。ただ、確かに言えることは落合が家族や指導者からたっぷりと愛情を注がれてきたこと。そして心身ともに大人になったとき、膨大な数の野球ファンを球場に集めるだけのスター性を秘めていることだ。

4 / 4

関連記事

キーワード

このページのトップに戻る