無警戒の元エースが復活→快投。明豊「投手王国」完成で優勝に現実味

  • 加来慶祐●文 text by Kaku Keisuke
  • 大友良行●写真 photo by Ohtomo Yoshiyuki

 いつの間にやら"投手王国"だ。息詰まるハイレベルな投手戦の末に、龍谷大平安(京都)にサヨナラ勝ちし、初の甲子園ベスト4進出を果たした明豊。

 初戦の横浜戦、2回戦の札幌大谷戦に先発した背番号1を背負う2年生左腕の若杉晟汰(せいた)。その2試合でリリーフ登板し、140キロ超のストレートを武器に好投した長身(184センチ)右腕の大畑蓮(3年生)。そして準々決勝で先発のマウンドを任されたのが背番号18の右腕・寺迫涼生だった。

龍谷大平安戦で先発して好投した明豊の寺迫涼生龍谷大平安戦で先発して好投した明豊の寺迫涼生 寺迫は途中、得点圏に走者を背負う苦しい場面もあったが、最速142キロのストレートに、ツーシーム、スプリットを巧みに織り交ぜ、5回を0点に抑える好投で試合の流れをつくった。その後、若杉、大畑へとつなぎ、龍谷大平安に1点も許さなかった。

 試合後、龍谷大平安の原田英彦監督は「相手にはエース級の投手が3人いた」と脱帽した。

 先発した寺迫だが、センバツの抽選日前日に滑り込みでメンバー入りした。1年秋から昨年夏までチームのエースナンバーを背負ったが、右ヒジの故障で秋の九州大会を回避。そのために全国的に知られることなく、センバツを迎えた。

 この寺迫の先発は原田監督にも想定外だったはずで、試合前取材で明豊の投手陣について聞かれた時も「左の若杉くんは運動神経が高く、右の大畑くんは大型だけど器用」と、寺迫の名前が出てくることはなかった。

 一見すると、寺迫のセンバツは奇策にも思えるが、決してそうではない。明豊の川崎絢平監督は、試合前に次のように語っていた。

「もともとはウチのエース。調子もいいし、エースとしての責任感とプライドに期待しています。去年の秋に投げられなかった悔しさをこの舞台で晴らしてほしい」

 赤峰淳部長も続く。

「あくまで勝つための起用です。直前の練習試合では球速も142キロまで戻ってきたし、何よりツーシームがキレています。龍谷大平安のように右打者を多く並べたチームは苦労すると思いますよ。初見の強みにも期待しています」

1 / 2

厳選ピックアップ

キーワード

このページのトップに戻る