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同世代投手に対抗心メラメラ。
菰野の岡林勇希が全国区になる日も近い (4ページ目)

  • 菊地高弘●文・写真 text&photo by Kikuchi Takahiro

 その試合で最速148キロだった岡林に対して、佐々木は常時150キロ前後。「レベルが違う」と兜を脱いだかと思いきや、岡林は「それでも負けたくないです」と口にする。

 奥川を擁する星稜とも9月に練習試合をしたが、あいにく奥川はU18代表帯同のため不在。だが、11月の明治神宮大会での奥川の快投はつぶさにチェックしていた。

「真っすぐのキレやコントロールのよさはもちろんすごかったんですけど、一番は自分の体の使い方をわかっていることですよね。その上でリリースだけ力を入れれば、いいボールがいくことを知っているのだと思います。参考になりました」

 だが、佐々木や奥川と比べても、岡林は自分が劣っているとは思っていない。自分自身に眠る能力をフルに使えば、自分も同じステージに立てると信じている。

「僕は、ピッチャーは自分の体を理解することが一番大事だと思っています。誰かに『あれをやった方がいい』と言われても、結局動かすのは自分なので。自分に合わなければ取り入れません。僕のようなオーバースローは、骨盤を縦に動かさないといいボールがいかずに左右に散らばってしまいます。骨盤をしっかり使えれば、ボールに角度も出てきますから」

 2018年の晩秋、岡林はある取り組みにチャレンジしていた。練習試合で「ストレートしか投げない」という制限を自ら課したのだ。1123日に三重県内の底上げを図るために開催された交流練習試合・宇治山田商戦に先発した岡林は、強打線を相手にストレート一本で押した。

 寒風の吹きすさぶなか、岡林は3イニングを投げて打者9人から5三振を奪うパーフェクト投球。最高球速は146キロだった。

「いかにストレートで空振りを取れるかが課題なんです。それと、夏の甲子園で見た吉田輝星さん(金足農→日本ハム1位)のように、同じストレートでも強弱をつけられるようになるといいなと思ったんです。やっぱり吉田さんは、ピンチでのギアの上げ方が違うので」

 全国的な知名度はなくても、同世代のトップレベルを肌で感じながら菰野という小さな町で密かに腕を磨く岡林勇希。2019年の秋には、その名前が佐々木や奥川といったビッグネームと並列に語られているかもしれない。

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