藤浪晋太郎が苦笑する6年前。
大阪桐蔭はドラマがないほど強かった

  • 石田雄太●文 text by Ishida Yuta
  • photo by Kyodo News,Sportiva

【短期連載】夏の甲子園「優勝投手」インタビュー~藤浪晋太郎編

 今夏、甲子園100回大会で史上初となる2度目の春夏連覇に挑む大阪桐蔭だが、初めての快挙達成はエース・藤浪晋太郎を擁した2012年だった。センバツを力強い戦いで勝ち抜くと、夏は一段とスケールアップ。なかでも藤浪は、準々決勝以降の3試合でわずか1失点と完璧な投球を見せ、見事快挙を達成した。春夏連覇の要因となったのは何だったのか。藤浪が当時を振り返る。

2012年に甲子園で春夏連覇を達成した大阪桐蔭・藤浪晋太郎2012年に甲子園で春夏連覇を達成した大阪桐蔭・藤浪晋太郎―― 夏になると、甲子園を思い出したりすることはありますか。

「そうですね......ああ、そういう季節だなとか、あれから6年も経ったのかって、そんなことを思います。懐かしいな、という感じです」

―― 今年の大阪桐蔭も春のセンバツで優勝して、甲子園での春夏連覇がかかっています。藤浪投手のときと同じ状況でこの夏を戦う後輩たちは、どう戦ったらいいと考えますか。

「それは『自信を持ってほしい』ということに尽きると思います。周りの期待する声は彼らにも届くでしょうし、当然、プレッシャーもあると思います。とくに今年は"最強世代"などと呼ばれて、自分たちの代よりもずっと周りが盛り上げている感じがします。だからこそ、自信を持って、普通にプレーして欲しい。難しく考えず、油断することなく、普通にやれればいいんじゃないかな、と思います」

―― でも、18歳の頃のご自分を思い出すと、油断なく普通にやることの難しさを感じることはありませんか。

「(西谷浩一)監督のミーティングでは、常に『油断するな』と言われ続けていたので、自分たちのときは油断とか驕(おご)り、スキといった類のものは一切、なかったと言い切れます。最後の夏は本当に普通にできましたから......」

―― その最後の夏、優勝するためのターニングポイントになったピッチングを挙げるとしたら、どの場面を思い出しますか。

「あの夏はそういう場面はなかったですね......甲子園に関しては、ありませんでした」

―― 甲子園に関しては......とは?

「大阪大会の決勝で打たれたんで......(10-1と9点をリードして迎えた8回、履正社の猛反撃にあい、一挙に7点を失って藤浪は8回途中で降板)あの試合はターニングポイントになったのかもしれません。自分、甲子園が決まった瞬間はベンチにいたんですよ。あれで気が引き締まりましたね」

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