2018.07.29

元プロ監督も華麗な守備を絶賛。
甲子園で見たかった東海大菅生の忍者

  • 菊地高弘●文 text by Kikuchi Takahiro
  • 大友良行●写真 photo by Ohtomo Yoshiyuki

 今でも忘れられないシーンがある。

 花咲徳栄の主砲・野村佑希の放ったゴロがサードの右を抜ける。普通に考えればレフトへのヒットになるはずなのに、打球の先に唐突にショートが現れる。甲子園球場のグラスラインを越え、芝生に両足を踏み入れて打球を抑えたショートは、一塁に大遠投。だが、送球はわずかに逸れてセーフになった。

 高校生ショートが甲子園の芝生から打者走者を刺す。もしアウトになっていれば、高校球史に残るプレーだったのではないだろうか。2017年夏の甲子園大会準決勝でそのプレーを目撃してから1年が経とうとしている今も、記憶が色あせることはない。

「さすがにあれはアウトにできないですね。あれが目いっぱいです」

 そのプレーを見せたショートは、後にはにかみながら振り返ってくれた。ショートの名前は東海大菅生の田中幹也。当時はまだ高校2年生で、神出鬼没のポジショニングと軽快な身のこなしから「忍者」と呼ばれた。昨夏の甲子園では神がかった好守を連発し、一躍人気者になった。

西東京大会の準決勝で敗れたが、攻守で存在感を示した東海大菅生の田中幹也 今夏、忍者の夏は西東京大会準決勝で終わりを迎えた。強敵である日大三に6対9で惜敗。1番・ショートで出場した田中は、4打数2安打2打点2盗塁(臨時代走時の盗塁を含む)。攻守にレベルアップした姿を見せながら、その勇姿を甲子園で見せることはかなわなかった。

 身長166センチ、体重63キロ。その小さな体と愛嬌のある顔つきだけを見ると、「中学生」と言われても不思議ではない。しかし、高校野球界でこれほど華のある内野手には、そうお目にかかれない。

 日大三との準決勝の試合前、スタンドでは観戦に訪れていた中学球児とおぼしき団体がシートノックでの田中のプレーに釘付けになっていた。田中が難しいバウンドのゴロをさばき、瞬時にボールを握り替えてバックホームした姿を見ると、中学生は口々に「はやっ!」「今どうやったの?」「すごすぎ!」と感嘆し、最後にはもはや笑うしかないといった様子だった。