2018.07.28

大阪桐蔭戦、履正社の大博打の舞台裏。
緊迫の攻防に高校野球の原点がある

  • 谷上史朗●文 text by Tanigami Shiro
  • photo by Kyodo News

 7月27日、北大阪大会の準決勝が大阪シティ信金スタジアム(旧・舞洲ベースボールスタジアム)で行なわれ、第1試合で大阪桐蔭履正社が顔を合わせた。その試合前からスタンドはざわついていた。

 両チームのシートノックが終わり、履正社のスターティングメンバーが発表されたときだ。1番・センター筒井太成、2番・ショート西山虎太郎(こたろう)に続き、いつも通り3番に濱内太陽がアナウンスされたが、ポジションはいつものライトではなく、ピッチャーだった。

センバツ王者の大阪桐蔭をあと一歩のところまで追い詰めた履正社ナイン この夏はもちろん、今年春も、昨年秋も、昨年の夏も、公式戦では一度も登板経験のない濱内の先発。もっと言えば、本人曰く「(高校入学後)試合で投げたのは1年のときに練習試合で少しだけ……」という”右腕”が、大阪桐蔭との大一番で先発のマウンドを託されたのだ。

 試合後、履正社の岡田龍生監督は「僕の監督人生のなかで、一番の博打(ばくち)かもしれないですね」と言い、こう続けた。

「一度も投げたことのない選手をベスト4の(大阪)桐蔭戦で投げさせて、下手したら5回、もしくは7回でゲームが終わるかもしれない。普段、こういう博打的なことはほとんどやらないのですが、今年の(両チームの)力関係を考えたら、普通に戦っても厳しい。じゃあ、その差を埋める手を何か打たないとダメだ、と考えたなかでの濱内の先発でした。なんとか5回ぐらいまで抑えてくれたら……と、そこに賭けました」

 昨年まで、大阪桐蔭との夏の直接対決は10連敗中。難敵相手に練られた秘策ではなく、「苦肉の策」だった。

 この夏の履正社は、初戦で公立の摂津に6-5と辛勝。2戦目も好投手・羽田野温生(はるき)擁する汎愛と大接戦。苦しい戦いを強いられた大会序盤、投手陣の状態は上がらず、例年のように絶対的エースもいない。そこで大会開幕後、元投手であった濱内がブルペン入りし、シート打撃でも投げるようになった。「投手・濱内」は既存戦力のプラスαを求めた結果だった。

 ところが、濱内が力のあるストレートに勝負球にできるチェンジアップ、スライダーなど、質の高いピッチングを披露。岡田監督のなかに「投手・濱内」の存在が日増しに大きくなっていった。