DeNA守護神直伝のツーシームが武器。「帝京の後輩」がドラフトへ

  • 高橋博之●文 text by Takahashi Hiroyuki
  • 大友良行●写真 photo by Ohtomo Yoshiyuki

 最後は地力の差が出てしまったか......。最終戦まで優勝の行方がわからなかった東都1部リーグは、東洋大が亜細亜大に9-0と大勝してリーグ戦3連覇を達成した。2位となった国学院大は2010年の秋以来の優勝こそならなかったが、2年生のショート・小川龍成が満票を獲得するなど、3人がベストナインに選出された。

 またエースとしてチームを引っ張った清水昇(のぼる/4年)は、3勝(2完封)、防御率1.75と抜群の安定感をみせ、最優秀防御率のタイトルを手にした。

春のリーグ戦で最優秀防御率のタイトルを獲得した国学院大の清水昇春のリーグ戦で最優秀防御率のタイトルを獲得した国学院大の清水昇 今年1月、まだ本格的な練習が始まる前、清水と話をする機会があった。そのとき、今年にかける決意をこう口にしていた。

「今年は最後の1年。なんとしてもタイトルを獲りたい。獲れるだけの自信はあります」

 清水といえば、しっかり試合をつくれる投手、バットの芯を外す投球ができる、MAX150キロのストレートに抜群のツーシーム......など、多くの評価を耳にする。

 その一方で、全国大会に出場したのは中学時代に一度だけ。帝京高校の3年間は、一度も甲子園の土を踏めなかった。大学進学以降も全国大会とは無縁。さらに、個人タイトルも獲ったことがなかった。だからこそタイトルを獲って、それにふさわしい投手であると証明したかった。

 清水は、野球の基礎を帝京の前田三夫監督から徹底的に教わった。

「帝京のグラウンドに行くと、今でも高校時代の記憶が鮮明によみがえってきます。やるべきことが多くて大変でしたが、やめようと思ったことは一度もありません。ただ1回だけ、心が折れそうになったときがありました。

 ある試合で、あまりにも不甲斐ないピッチングをして、前田監督から『お前は歴代のエースのなかで、もっともエースナンバーが似合わない』と。ショックでした。うつろな目で帰宅しても何もしゃべらない僕を見て、両親が本気で心配していました。でも、前田監督は挽回するチャンスを必ず与えてくれる。そうやって何度も落とされ、はい上がりながら甲子園を目指した3年間でした」

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