都立高の野球監督にジェネレーション闘争。
甲子園を叶えるのは誰だ?

  • 菊地高弘●文 text by Kikuchi Takahiro
  • photo by Kyodo News

「今の若い指導者は誰もぶつかってきません。私学にはどんどん次の世代が出てきていますよ。『かかってこいや! いつでも切磋琢磨しよう』と言いたいです」

 これは2016年7月に掲載した、都総合工科の有馬信夫監督(2018年4月より都足立新田に異動)のコメントである。1999年夏に都城東を率いて甲子園に出場した有馬監督に、都立高が私学と遜色なく戦えるようになった理由を聞いていたのだが、取材は思わぬ方向に転がっていった。

1999年夏に都城東を率いて甲子園出場を果たした有馬信夫監督1999年夏に都城東を率いて甲子園出場を果たした有馬信夫監督 それは「都立高に次代を担うような若手指導者がいない」という不満だった。有馬監督は「これはぜひ書いてください」と前置きして、冒頭のように激しく吠えたのだった。

 この言葉に「ここまで言われて悔しいです」と奮い立ったのが、都新宿の田久保裕之監督だ。

 田久保監督は今年で37歳。前任校の都小山台では助監督を務め、2014年には21世紀枠で春のセンバツを経験した。2017年より母校・新宿の監督を務めている。

 そんな田久保監督は、2012年から都内の若手指導者の勉強会を主宰している。その会は田久保監督の苗字から俗に「TKB」と呼ばれている。

「今から20~30年前にかけて、都立高の教員採用が厳しい時期がありました。今の都立高野球部には、その世代の監督がほとんどいません。双子の兄弟である芝浩晃監督(都雪谷)、芝英晃監督(都足立西)を始めとした40代前半から下の世代と、有馬先生などの50代の監督との間が空洞化していたんです。危機感を感じて、三國力監督(都東村山西)と話し合い、その空洞を埋め、『俺たちがやるんだ!』と立ち上げたのがTKBなんです」

 そして2018年のTKBに、田久保監督は講師として有馬監督を呼ぶことに決めた。

「有馬さんと若手の直接対決なので、ぜひ見に来てください!」

 そんな田久保監督の誘いを受け、都内会議室で開かれたTKBを見学させてもらうことになった。

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