2018.05.23

あのプロ野球「盗塁王」が、給料ゼロで
米独立リーグコーチになる事情

  • 阿佐智●文・写真 text&photo by Asa Satoshi

 日本のプロ野球は開幕してから約2カ月が経ち、四国アイランドリーグplus、BCリーグなどの独立リーグもスタートするなど、本格的な野球シーズンに入った。海の向こうアメリカでも、4月は異常気象の影響で試合中止が多発したが、今はメジャー、マイナーとも各地で熱戦が繰り広げられている。

 そのアメリカでは、5月になると"第2の開幕"を迎える。北米大陸は幾重にも重なるマイナーのシステムのほか、独立リーグが各地に散らばっている。独立リーグは他国のプロリーグと比べて遜色のないものもあれば、プロとは名ばかりで「硬式球を使った草野球程度」のものまで、レベルは千差万別だ。

 独立リーグは、メジャーのキャンプが終わったあとから本格的に動き出す。メジャーの40人枠に漏れた選手のなかには特定球団とのマイナー契約を嫌がる者がおり、そういう選手から順にレベルの高い独立リーグにピックアップされていく。

 そのなかのひとつカンナム・リーグ(Canadian-American Association)は、その名の通りカナダとアメリカで展開される独立リーグだ。近年はキューバのナショナルチームや日本からも四国アイランドリーグplusの選抜チームがスポット参戦。今シーズンはキューバだけでなく、ドミニカのチームもリーグに参加する予定なっている。

 このリーグのレベルはマイナーの2Aと同等と言われ、かつてメジャーや3Aでのプレー経験があるベテラン選手や、夢をあきらめきれずにメジャーへ再挑戦する若いプレーヤーが数多く存在している。

ダイエー時代の91年にシーズン42盗塁をマークし、盗塁王に輝いた大野久氏 そんなリーグに、今回挑戦する日本人がいる。ただし、選手としてではなくコーチとして、だ。

 大野久――その名を知る野球ファンは、今となってはそう多くないかもしれない。しかし、かつて所属していた阪神タイガースの本拠地のある関西圏では、いまもファンからサインを求められることがよくある。そのためか、現役引退後に10年間住んでいた故郷の茨城を離れ、現在は大阪に拠点を置いている。

「僕の場合は、しばらく表に出ていませんでしたから。それで珍しがられるんですよ」

 表に出ない間、大野は波乱万丈の人生を送っていた。