「サニブラウンに勝った男」は2年後のドラフトに向けて出塁率を磨く (3ページ目)

  • 松本英資●文 text by Matsumoto Hidesuke
  • 大友良行●写真 photo by Ohtomo Yoshiyuki

 将来の夢は、もちろんプロ野球選手になることだ。小学3年生のときに母親を亡くしたときから、ずっと思い続けているという。

「母は自分が走ったり、野球をしている姿を見るのが大好きでした。将来、僕がプロ野球選手になることを夢見て、いつも熱心に応援しに来てくれた思い出があります」

 夢を叶えるため、いつしか父と1歳年上の姉が五十幡の野球中心の生活を支えるようになる。

「中学時代に所属した東京神宮シニアの練習場は自宅から車で1時間かかる遠隔地だったので、練習がある日は朝4時に家を出ることもありました。父は仕事で疲れているにもかかわらず、毎週末、練習場まで送迎してくれました。

 気がついたら、自分優先の生活になってしまっていたように思います。そのせいで、姉は休みの日でも父と一緒に出かけることができなかった。父と姉には大変な迷惑をかけてきました。必ずプロ野球選手になって、恩返ししたい気持ちでいっぱいです」

 五十幡について、中央大の森田健矢マネージャー(2年)は、次のように語る。

「性格はとても真面目。練習も学業も手を抜かず、一生懸命こなす。努力を怠らない選手です。入学当初は体の線が細かったけど、ウエイトトレーニングを地道に続けてきた結果、今ではムキムキのすごい筋肉質な体になりました」

 そんな五十幡が目標にするのが、高校の先輩で、今年秋のドラフト候補でもある長沢吉貴(日大4年)だ。

「自分と同じタイプで、出塁率が高く、盗塁の技術も長けている。高校時代はいつも楽しみながら野球をしている印象がありました。そんな長沢さんを目標にして、2年後のプロ入りを目指したい」

 かつてのライバル、サニブラウンにとっても2年後は集大成の1年になりそうだ。あれから5年が過ぎた今、サニブラウンのことをどのように受け止めているのか。

「高校1年のときに会ったきり、連絡すら取っていません。せめて電話で話すぐらいしたいですが、彼も忙しいから無理でしょうね(笑)。世間は自分について"陸上の五十幡""サニブラウンに勝った男"というイメージが強いみたいですが、それは中学時代の話。とにかく野球ですごい選手になれるように頑張りたい。彼に負けていられません」

 2年後のプロ入りを夢見て、五十幡は東都で暴れまくる。

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