メチャクチャ打つけど投げられない。西川愛也にドラフト指名はあるか

  • 谷上史朗●文 text by Tanigami Shiro
  • 大友良行●写真 photo by Ohtomo Yoshiyuki

 この男がドラフトでどんな評価を受けるのか――。

 清宮幸太郎(早稲田実)、安田尚憲(履正社)、中村奨成(広陵)といった高校生スラッガーに注目が集まっているが、高校球界屈指のヒットメーカーといえば、花咲徳栄の西川愛也だろう。

 この夏、埼玉大会で26打数13安打、4本塁打、18打点の活躍を見せ甲子園出場の立役者となると、本大会でも27打数9安打、10打点と初の全国制覇に大きく貢献した。

夏の甲子園でも10打点を挙げるなど、全国制覇に貢献した花咲徳栄の西川愛也夏の甲子園でも10打点を挙げるなど、全国制覇に貢献した花咲徳栄の西川愛也 スイングの振り出しの速さ、広角に打ち分ける技術の高さを甲子園という大舞台で証明してみせた西川だが、スカウトたちの関心はバッティングではなく、「投げられるのかどうか」というその1点だけである。

 昨年、西川は大胸筋断裂という大ケガを負った。その影響で甲子園でもレフトに打球が飛ぶと、カットマンが西川のすぐ近くまで行き送球を受けていた。距離にして10メートルちょっと。過去に、これだけのハンディを抱えたドラフト候補はいただろうか。

 投手がヒジや肩に故障を抱えているというケースはこれまでに何度もあったが、野手で、しかも高校生が野球人生を左右しかねないケガを負いながらドラフトを迎えるというのは、実に珍しい。

 きっかけは2年春。4番として2安打を放ったセンバツでの秀岳館(熊本)戦からしばらくして、西川は体に異変を感じた。

「パッと見たら、このあたりにアザみたいなものができていたんです」

 そう言って、西川は右手の二の腕付近を触った。その部分が内出血を起こしており、違和感もあった。その状態で試合に出ていたが、春の県大会決勝でさらに大きなアクシデントに見舞われた。

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