2017.08.24

広陵・中村奨成に「本当の仕事」をさせず。
花咲徳栄は魔物を知っていた

  • 田尻賢誉●文 text by Tajiri Masataka
  • 大友良行●写真 photo by Ohtomo Yoshiyuki

 スターを生み、育てる。それが、甲子園だ。

 早稲田実・清宮幸太郎が出場できなかった今大会。新たなスターとなったのが広陵・中村奨成(なかむら・しょうせい)だった。準決勝までにPL学園・清原和博がマークした1大会5本塁打の記録を32年ぶりに塗り替える6本塁打を放ったのをはじめ、打点、塁打でも大会記録を更新。決勝を前に、まさに、中村のための大会になった。

決勝戦で3安打を放った広陵・中村奨成だったが、打点を挙げることはできなかった 本塁打というわかりやすい魅力だけに、観客も盛り上がりやすい。中村の6本目のホームランボールを捕った女性の「中村君の本塁打を見たくて来た」というコメントがスポーツ紙に紹介されていたが、大観衆の期待はまさにその一点。決勝は、広陵と花咲徳栄のどちらが勝つかより、中村がどこまで記録を伸ばすのか。そこに興味を抱く人も多かった。

 結果を先に紹介すると、決勝の中村の成績は5打数3安打2二塁打。甲子園でひとつもなかった三振を2つ喫したが、3安打を加えて松山商・水口栄二(元オリックスほか)の大会通算19安打の記録に並んだ。二塁打も2本放って大会最多二塁打の記録に並んだ。期待された本塁打こそ出なかったものの、花咲徳栄投手陣対中村の対戦では、中村の勝利といっていい。

 だが、ひとつだけ足りないものがあった。

 それは、打点だ。同じ1点でも、誰が打って入ったかどうか。そこに大きな意味がある。広陵の一塁コーチャーを務める永井克樹は言う。

「他の人が打つのとは違いますね。あの人が打ってくれたら、それまで点が入っていなくても、ひと振りで一気にビッグイニングになる雰囲気を作り出せるんです」