2017.08.22

元ドラ1、元独立リーガー、
元リストラ担当…
甲子園を彩る異色の指導者

  • 清水岳志●文 text by Shimizu Takeshi
  • 大友良行●写真 photo by Ohtomo Yoshiyuki

 興南(沖縄)に勝利したあと、インタビュー控え室で智弁和歌山の中谷仁コーチは記者に囲まれてご機嫌だった。大会4日目、好カードが続き、第1試合から4万7000人の大観衆を集めた日だ。

 今年の春、智弁和歌山の高嶋仁監督が後継者に指名したのは、1997年の夏の甲子園優勝メンバーで主将を務めていた中谷だった。中谷は同年秋のドラフト1位で阪神に指名され入団。その後、楽天、巨人でもプレーするなど、プロの世界で15年間生き抜いた。

元独立リーガーでもある三本松の日下広太監督「現役を引退してすぐにアマチュア資格回復の講習を受けていたので、オファーがあればと。そんなときに母校から声をかけていただいて……やらない手はないですよね。ただ、高校野球の指導に関わると、休みはなくなる、家族との時間はなくなる、収入は……とにかく、家族を説得することでした。しんどいのは嫁さんです。まあ、今は納得して全面協力してくれています(笑)」

 高嶋も中谷のコーチ就任を喜んだ。

「十数年前から戻って来い、と言っていました。アイツのコーチングがよかったから甲子園に来られたんですわ。ボール拾いをはじめ、裏方の仕事もしっかりやってくれています。そういう姿は選手も見ていますからね」

 練習ではバッティングピッチャーをするし、ケージのうしろに立ってアドバイスも送る。練習が終われば、選手たちと一緒にボールを拾い、ネットを担いで運ぶ。

「プロの世界で15年やったんですけど、レギュラーではなく、裏方みたいな仕事が多かったんで、こういう方が向いているし、得意かもしれないですね(笑)。もちろん、ノックもしますし、バッティングピッチャーで投げろと言われれば200球でも投げます。気持ちは若くなっていますが、次の日、肩が上がらない。肩甲骨が肉離れ中です(笑)」