昨年準優勝の北海・大西健斗が語る「甲子園で負けてよかったこと」 (6ページ目)

  • 元永知宏●取材・文 text by Motonaga Tomohiro
  • photo by Kyodo News

――もしあのままマウンドで投げ続ければ、甲子園の本当のよさに気づかなかったかもしれませんね。外野スタンドのファンの声を自分の耳で聞くことはなかったでしょう。

大西 あの瞬間、僕の野球に関する考え方が変わりました。打たれたおかげですね。準優勝という結果に終わりましたが、正直、負けてよかったと思っています。もちろん、メダルの重みを感じましたし、最後に勝てなかった、日本一になれなかったという悔しさはありました。でも、試合後に閉会式の準備があって、ベンチ前に待機して、選手たちと笑いながら「甲子園、楽しかったね」「みんな、頑張ったよな」と話をしました。負けたことについて、涙は出ませんでした。

 ただ、アルプススタンドにあいさつに行ったとき、学校の人たちやファンの方がフェンスのところまできて「よく頑張った」「お疲れ!」と言ってくれました。それを見た瞬間に泣いてしまいました。それまでしんどいことしかなかったのですが、このとき「野球をやってきてよかった」「野球は最高だな」と思いました。

――もし、大西投手が全国優勝を果たしていたら、この感情は沸いてこなかったかもしれません。

大西 負けてしまったから、「これからどうすればいいか」を考えることができました。負けて「どうあるべきか」という課題を見つけることに意味があると思います。甲子園がそれを教えてくれました。


大西健斗(おおにしけんと)
1998年11月、北海道生まれ。2015年夏、全国選手権1回戦で甲子園初登板を果たしたが、ワンアウトもとれずに降板。2016年夏には、エースで主将として甲子園に出場した。決勝の作新学院戦では途中降板したものの、5試合すべてに先発し、北海高校の準優勝に貢献した。現在は、慶應大学野球部に所属。春季リーグ戦で神宮デビューを果たした。

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