昨年準優勝の北海・大西健斗が語る「甲子園で負けてよかったこと」 (5ページ目)

  • 元永知宏●取材・文 text by Motonaga Tomohiro
  • photo by Kyodo News

――疲労のため、フラフラに見えましたが。

大西 でも、自分から志願してレフトに入りました。守備位置まで走っていくと、観客席で拍手が起こって、お客さんたちの声が聞こえてきました。「よく投げたな~」「お疲れさん」「まだ試合は終わってないからね」と。僕はそのとき、ものすごく感動していました。「これが野球なんだな」と。ずっと野球をやってきて本当によかった。あれだけ弱かったチームが甲子園で勝ち上がって、みなさんに応援してもらったことがうれしかったですね。三塁側からもレフトスタンドからも聞こえてきました。

レフトのファウルフライをフェンス近くで捕ったときには「ナイスキャッチ!」「頑張れ、頑張れ」と聞こえてきました。僕自身、打たれてマウンドから降りたことで落ち込んでいたのですが、声援のおかげで上を向くことができました。マウンドでは後輩が投げています。僕の声は届かないかもしれないけど、思いが伝わればと思って精一杯声を出しました。

――結局、北海打線は今井投手を打ち崩すことができず、1対7で敗れました。

大西 僕自身、マウンドがすべてだと思っていました。だからこそ、降りたくなかったし、誰にも譲りたくありませんでした。でも、レフトの守備についたことで甲子園の素晴らしさに出会うことができました。レフトから甲子園の風景を初めて見て、「甲子園はこんなにすごいところなんだな」と思いました。

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