「九州の快腕」「宮城のドクター0」...地方大会で消えた凄い投手たち (2ページ目)

  • 安倍昌彦●文 text by Abe Masahiko
  • 大友良行●写真 photo by Ohtomo Yoshiyuki

 練習試合で対戦した西日本短大付(福岡)の打線は、間違いなく全国クラス。試合序盤、その強力打線が山口のストレートの強さについていけない。左打者の懐(ふところ)を突いたストレートがどん詰まりとなって一塁に転がる。金属バットが折れたのでは......と思うぐらいの詰まり方だった。

 試合前のブルペンでは、縦、横のスライダーが荒れに荒れていたが、試合が始まった途端、内に外にビシバシ決まるから、もう手がつけられない。縦に落とし、横に滑られて、スライダー2球でサッと追い込む軽快なテンポも、春のセンバツではなかったものだ。

 気温33度の炎天下。さすがに前半飛ばし過ぎたのか、後半は投げ急ぎが目立ち、センバツのときのように腕が横振りになり、アウトコースを狙ったストレートがシュート回転して真ん中に入ることもあったが、そんな"課題"よりも春からの"成長"の方が強く印象に残った。

 一方、田中は"したたか"な投手だ。後半にへばらないように、打者の実力を見計らいながら出力を加減して投げるのがにくい。

 リーチが長いから、軽く腕を振っているようでも速球が唸りを上げてミットを突き刺す。それだけじゃない。カウントを取るカットボールを右打者の外にも、左打者の外にも出し入れできるテクニックは、まさに"大人"のピッチングだ。

 ストレートとカットボール、スライダーでカウントをつくり、勝負球のチェンジアップの"抜け"はプロでも通用する必殺球と言える。

 さらに、ボークぎりぎりのけん制や、セットポジションでのクイック。球審から警告を受けると、「すみません、わざと試しました」と言ってのける、その根性。間違いなくマウンドを支配できる男だ。

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