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「一番おとなしい指揮官」
北海・平川監督が手にした準優勝の重み (3ページ目)

  • 中村計●文 text by Nakamura Kei
  • 岡沢克郎●写真 photo by Okazawa Katsuro

「甲子園で勝つには、とにかく出続けるしかないと思いましたね。ぽっと出で勝てるほど、甘くはない」

 それだけにこの夏、5度目の挑戦にして初めてつかんだ1勝は格別だった。

「本当にうれしかったですね。それからは、リラックスして采配できました」

 初勝利で勢いに乗り、計4度も聖地で校歌を聴くことができた。校歌に合わせ、スターマークの校旗がゆっくりと掲揚される様子を見つめる平川監督の姿が印象的だった。

「うちの校歌は、土井晩翠の作詞なんです。全国でも屈指の、いい校歌だと思います。OBの中には、校歌を聴いて、泣き出してしまう人もいるくらいですから」

 長い冬を耐えて、春に花をつける。まさに北国の冬から春にかけてのドラマを体現したかのような指揮官であり、チームだった。

 年配の坪岡英明部長は、平川監督をこう評する。

「パワー野球が全盛となり、打たなきゃ勝てないって言われても、野球は守備だって地道なことを続けてきた。その結果だと思いますよ。北海は北海道野球の歴史そのもの。そこの監督を若くして引き受けて、20年近く続けるなんて考えられない。生活のすべてを捧げなければ務まらないですからね」

 北海の伝統として、平川監督が受け継いできたものは何かと問うと、しばらく考えた後に、落ち着いた口調で、しかしきっぱりと言った。

「北海は勝たなきゃダメだと。そこだけじゃないですか」

 平川監督は、きっとまた決勝の舞台に戻ってくる。

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