2016.08.22

北海を襲った「幸運」→「悲運」の暗転。
作新学院54年ぶりV

  • 田尻賢誉●文 text by Tajiri Masataka
  • 大友良行●写真 photo by Ohtomo Yoshiyuki

 まだツキはある。そう思った。

 1対0と北海がリードして迎えた4回表の作新学院の攻撃。無死満塁で打者が7番・篠崎高志という場面だ。

 北海内野陣は前進守備を敷いた。中盤で1点リード。強打の作新打線と準決勝までの4試合を一人で投げ抜き疲労の色が濃いエース・大西健斗の状態を考えれば、1点を守るよりも最少失点にとどめる守り方を選択した方がいいと思われたが、北海は前に守った。

作新学院が北海を7-1で下し、54年ぶりの優勝を飾った ただ、それはベンチの選択。どうこう言うつもりはない。

 それよりも、気になったのが北海の一塁手・川村友斗の守っている位置。前進守備を通り越して、”超前進守備”なのだ。一般的な前進守備の位置よりもかなり手前。チームによっては、無死一、二塁の場面でバントシフトをかける際の一塁手の位置ぐらいの場所だ。

 じつは、川村がここに守るのはこの場面だけではない。この大会中、ずっとその”超前進”の位置に守っていた。聖光学院との準々決勝では3対2と聖光リードで迎えた3回裏1死一、二塁の場面。打者が右のパワーヒッターの鎌倉誠で、バントの構えがなく、カウント3-1のバッティングカウントになってもそこに守っていた。7対3と北海4点リードでバックホームの必要がない9回裏の一死満塁、打者が2番・小泉徹平という場面で守っていたのも同じ場所だった。

 いずれも守備位置が致命傷になりかねない場面。だが、北海にはツキがあった。鎌倉の打球は三塁線を襲ったが、サードの佐藤佑樹が横っ飛びで好捕してダブルプレー。小泉の打球も快音を残したが、痛烈な打球はショート正面に飛んで併殺で試合終了になった。試合後、聖光学院の横山博英部長は言っていた。

「ファーストが浅いのはわかっていた。でも、負けるときって、そこに打球が飛ばないんだよね」