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北海を襲った「幸運」→「悲運」の暗転。
作新学院54年ぶりV (2ページ目)

  • 田尻賢誉●文 text by Tajiri Masataka
  • 大友良行●写真 photo by Ohtomo Yoshiyuki

 そして、決勝の4回表無死満塁。篠崎の打球が川村の前に飛んだ。

 ボテボテの弱い当たり。まさに、浅く守る川村の守備位置でなければ捕れない場所に、ゴロが転がってきたのだ。

 これ以上ないほど、ツイているといっていい。

 ところが、次の瞬間、北海の運命は暗転する。川村の目の前に転がっていたゴロは、ファーストミットを差し出そうとする川村から逃げるように、一塁側のファウルエリアにイレギュラーバウンドしたのだ。

 運が逃げていっただけではない。悪夢までやってきた。

 川村のファーストミットをすり抜けた打球を、球審の古川がフェアと判定した。一塁ベースよりはるか手前。川村が触っていなければ、ファウルボールになる。一塁塁審の野口がファウルのジェスチャーをしようと両手を上に挙げかけたそのとき、古川球審は「ミットに触った」とジャッジをした。三塁ベンチから真正面に見える平川敦監督が抗議の伝令を送るが、判定は覆らない。

 川村が「グローブに当たっていないです」と言い、打った篠崎も「触っていないのは見えました。ラッキーでした」と言う打球が、フェアとなり、タイムリーエラーとなってしまったのだ。

 たった1点。まだ同点というかもしれない。だが、これは大きな意味のある1点だった。

 なぜなら、大西と篠崎の勝負は完全に"篠崎の負け"だったからだ。

 無死満塁。

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