早実・清宮の夏を終わらせた八王子「100キロのストレート」 (2ページ目)

  • 菊地高弘●文 text by Kikuchi Takahiro
  • photo by Kyodo News

 ところが7月23日、「波乱」は起きた。早実は西東京大会準々決勝の八王子戦に4対6で敗れたのだ。八王子は今夏のシード校で早実はノーシードではあるが、両校は昨夏も準々決勝で対戦し、その際は早実が11対5で完勝している。

 早実の和泉実監督が試合後、不思議そうな顔でつぶやいた。

「金子が言っていたんですよ。『スローボールが打ちにくい』って。チェンジアップもあるんだけど、スピードを殺したスローボール。インコースを厳しいボールで攻められた上で、あのスローボールを投げられると、なかなか合わなかったですね」

  八王子の勝利の立役者になったのは、9回途中まで早実の強打線を粘り強く抑えた2年生左腕・早乙女大輝だった。身長171センチ、体重69キロ。ストレー トのスピードはほとんど120キロ台。安藤徳明監督ですら「まさか早乙女が2年の時点でエースになるとは想像もしていなかった」と語るほど、一見すると平 凡な投手だ。なぜ、そんな投手が早実打線を抑えることができたのだろうか。

「スイングスピードが速いな......」

 素振りをしながら打席に向かってくる清宮を見て、八王子の捕手・細野悠は内心おののいていた。細野は試合前から清宮のことを「どんなボールにも対応してくるバッター」と見ていたという。

 すでに初回の時点で八王子の「プラン」は崩れていた。清宮の前に「1番の金子を出さないようにしよう」と考えていた八王子バッテリーだったが、金子にスプリットを捉えられ、センター前ヒットで出塁を許していたのだ。

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