甲子園は「夢」から「目標」へ。都立高校野球部が強くなった理由

  • 菊地高弘●文 text by Kikuchi Takahiro
  • 共同通信社●写真 photo by Kyodo News

 今週末から甲子園出場をかけた戦いが始まる東京都。そのトーナメント表を見ても、どの高校が都立なのかを判別するのは難しいだろう。学校名から「都」の文字が消えているからだ。

 かつて、東京の高校野球のトーナメント表や大会名簿などには、都立高校の学校名の頭に必ず「都」という表記が入っていた。たとえば、都立勢として初めて甲子園に出場した国立(くにたち)高校なら、「都国立」という具合。だが、近年はすべての都立高校から「都」の表記が外れている(武蔵高校など、都立・私立に同一名の高校がある場合は除く)。

1999年の夏、都立高校として2校目となる甲子園出場を決め、喜ぶ城東ナイン1999年の夏、都立高校として2校目となる甲子園出場を決め、喜ぶ城東ナイン 東京都高野連に確認すると、2013年に東東京・西東京の割り振りを再編した際、「都」の表記を外すことに決めたそうだ。その理由は「他の地域では公立校でも『県』などが頭につかないため」だという。

 東京都の高校野球は、圧倒的に私学優勢の歴史が続いていた。だが、今や「都立だから弱い」「私学だから強い」という図式は成立しない。近年の日野高校のように鋭いスイングの強打線が中堅私学を圧倒するシーンを見ていると、どちらが都立高だかわからなくなる。東京都高野連の「都」を取り去る決断に他意はないとしても、過去の遺物をついに一掃したようにすら感じられた。

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