2016.03.22

「末代の恥」から6年。開星前監督・野々村直通が見た甲子園

  • 菊地高弘●文 text by Kikuchi Takahiro
  • 大友良行●写真 photo by Ohtomo Yoshiyuki

 阪神甲子園球場の三塁側スタンドに、テンガロンハットを被った強面(こわもて)の男性が座っていた。

「不思議と感慨は何も湧いてこんね」

6年ぶりにセンバツ出場を果たした開星高だったが、八戸学院光星に2−6で敗れた

 その男性、野々村直通氏が春のセンバツのために甲子園にやってきたのは6年ぶりだった。隣で妻の喜代子さんが「テレビで『開星高校は6年ぶりの甲子園出場です』って出るたびに、なんだか6年前に思い出すことがあってイヤなのよね」と茶目っ気たっぷりに野々村氏に微笑みかけた。

 野々村氏はあらためて聖地のグラウンドを眺めながら、静かにつぶやいた。

「今は自然体で野球が見られる。名将と言われる監督は、こんな感じの冷静さでサインを出しているのかな。ワシもこれくらいの冷静さで試合に入れていれば、甲子園でもうちょい勝てたかな?」

 6年前の春のセンバツ──。野々村氏は当時、開星高(島根)の監督としてセンバツにやって来た。巨漢の2年生エース・白根尚貴(現・DeNA)、安打製造機・糸原健斗(現・JX−ENEOS)を擁して前年秋の中国大会で優勝。「全国制覇」を意識して挑んだ大会で、まさかの1回戦負けを喫してしまう。

 相手は21世紀枠で出場した向陽(和歌山)だった。

 試合後、野々村氏は敗軍の将として報道陣に囲まれた。常々、勝負に対して「生きるか、死ぬか」という覚悟で臨んでいる野々村氏は、悔しさのあまりずっと押し黙ったまま。沈黙に耐えかねた報道陣が、苛立ちながら「なぜ黙っているんですか」と問い詰める。野々村氏はカッとなり、なかば自棄になってこう発言してしまう。

「21世紀枠の学校に負けたのは末代までの恥。腹を切って死にたい」