川崎憲次郎が今も忘れない落合監督の「オレの仕事は選手のクビを切ること」発言と引退試合で流してくれた涙 (3ページ目)

  • 水道博●文 text by Suido Hiroshi
  • photo by Sankei Visual

 開幕戦を任せることによって、私のモチベーションを上げることが最大の目的だったということです。中日に移籍してからの私は、ケガばかりで戦力になれず、焦りもあったしモチベーションも下がっていました。その言葉をもらって、「もう一度やってやろう」と思ったのは言うまでもありません。

 ただこの年も結局3試合にしか投げられず、中日が優勝を決めた翌日(10月2日)、落合監督に呼ばれ、こう告げられました。

「来年、中日はおまえと契約しない。辞めるか、他球団で続けるかだ。引退するなら、明日投げろ」

 引退を決めた私は家族をナゴヤドームに呼び、10月3日、古巣・ヤクルト相手に引退試合をさせていただきました。古田敦也さん、宮本慎也、岩村明憲を三振に打ちとり、現役に別れを告げました。試合後、両軍ナインに胴上げをしてもらい、最高の野球人生を送ることができました。驚いたのは、クールな印象の落合監督が涙を流してくれたこと。落合監督の発する言葉はぶっきらぼうに聞こえますが、そこに至るまでの経緯があって、とても気遣いのこもった温かいものなんです。

 一見、対照的な野村さんと落合さんですが、いつも選手のことを第一に考えてくれるという点では同じでした。

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