【自転車】片山右京「ひたむきな努力に無駄なものはない」 (3ページ目)
「たしかに、そういう主張は世の中にあるし、その必要性も分からないではないけれども、まず全力で挑戦を開始すべきときには、そんなことは考えなくてもいいんじゃないかな。そんなことを考えていたら、絶対に成功するわけがない。
大人になってからのリクルーティングや、大事な局面で事故をした場合の保険、という意味では、セーフティネットやセカンドオプションという考え方も、時に応じて必要になることもあるだろうけど、子どもたちに、『努力をしたからって、誰でも夢が叶うわけじゃないんだよ』なんて言う必要は、まったくない。
これは結果論的で、月並みな言い方になってしまうけれども、努力をしたことは決して無駄にはならない。全力で努力して、地団駄を踏んで泣いた経験のないような人に限って、そういうことを言うのかもしれない。中途半端にしかやらなかったから、あきらめきれないし、辞められないし、相手のことを認めない。
ライバルをつぶしてやりたいと思うくらい努力をした人なら、むしろそんなことはいわないと思いますよ。強い相手に対しては、やがて相手の実力を素直に認めるようになるし、そこまで自分が精一杯できる限りの努力したのなら、あきらめることもできる。だから、頑張って自分は何かになるんだ――と、ひたむきに続ける努力に、無駄なものなど何もないんです。生きているというのは、結局そういうことだと思うんですよね」
著者プロフィール
片山右京 (かたやま・うきょう)
1963年5月29日生まれ、神奈川県相模原市出身。1983年にFJ1600シリーズでレースデビューを果たし、1985年には全日本F3にステップアップ。1991年に全日本F3000シリーズチャンピオンとなる。その実績が認められて1992年、ラルースチームから日本人3人目のF1レギュラードライバーとして参戦。1993年にはティレルに移籍し、1994年の開幕戦ブラジルGPで5位に入賞して初ポイントを獲得。F1では1997年まで活動し、その後、ル・マン24時間耐久レースなどに参戦。一方、登山は幼いころから勤しんでおり、F1引退後はライフワークとして活動。キリマンジャロなど世界の名だたる山を登頂している。自転車はロードレースの選手として参加し始め、現在は自身の運営する「TeamUKYO」でチーム監督を務めている。
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