【自転車】片山右京「ひたむきな努力に無駄なものはない」 (2ページ目)

  • 西村章●構成・文 text by Nishimura Akira 甲斐啓二郎●写真 photo by Kai Keijiro

 この青少年育成という観点から、片山たちが立ち上げたプロジェクトが、『片山右京チャレンジスクール』というイベントだ。年に数回、子どもたちに野外活動を通じて挑戦する気持ち、あきらめない精神の大切さを学んでもらいたいという目的で、2009年にスタートした。今年はトレッキングやサマーキャンプ、ラフティング、フリークライミングなどを通じて、多くの子どもたちが自然環境の中で、自分たちなりに様々な挑戦を行ない、仲間とともに貴重な体験を積み重ねている。このチャレンジスクールを開催する時期には、片山自身も多忙なスケジュールを調整し、チャレンジスクールの「校長先生」として毎回、必ず参加する。

 一切、手を抜くことなく、期間中は子どもたちと全力で関わり合う片山の姿勢は、スクールに参加する子どもたちの保護者に対しても、いい刺激になっているようだ。

「誤解を怖れずに言えば、僕たちの本業って、自転車でも、クルマでも、ましてや山登りでもないんですよ」

 片山は、分かりますか、と問いかけるような笑顔を浮かべて、話を続ける。

「チャレンジスクールの場合でも、どうやったらもっと子どもたちによく伝わるのだろう......という課題は山のようにあります。でも、夢を持っている子どもたちや、頑張ろうと努力する人々に対して、障害があろうが、お父さんがいなかろうが、仮設住宅に住んでいようが、そんなものは一切関係なく、『頑張れば、見ていてくれる人がいるんだ』『強くなったら、応援してもらえるんだ』と彼らが信じて、怖れることなく挑戦できるようになってほしいんですよ。でも、その一方では、スポンサーや支援者を介在させて、彼らにも何らかの形でメリットを発生させるようにしなければ、とても回っていきませんよね。

 だから、そういう環境を僕たちの世代がちゃんと作りあげて、『おれたちの国は大丈夫だぜ』『ちゃんと自分たちの努力を見ていてくれる大人たちがいるんだ』と、子どもたちが心配せずに物事に挑戦していけるシステムを形にしていくことが、言ってみれば僕たちの本業であり、本当に成(な)すべきことだと思います」

 そのような志(こころざし)に対して、しかし近年では、挑戦に失敗した場合を考慮して何らかの対策をあらかじめ講じておくことも必要ではないか――、という議論もある。いわば、挫折した場合のセーフティネットだ。

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