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【自転車】片山右京「エースの素顔は、日本人以上に日本的」 (2ページ目)

  • 西村章●構成・文 text by Nishimura Akira photo by Sportiva

 2014年の伊吹山ヒルクライムは、シーズン第2戦に組み込まれた。4月13日の天候は薄曇り。標高の低いスタート地点ですらかなり肌寒い状態で、ドライブウェイ終点の伊吹山頂上に設定されたゴール地点の気温は4度。残雪がいたるところに白い塊を残していた。

 13時45分に始まったレースは、気温の低さもあって緩やかなペースで始まったが、開始早々にホセが集団から抜け出して、以後は一度も前を譲らず後続に1分以上の差をつけ、2年連続で伊吹山を制した。そして、この戦いで勝利したことにより、開幕戦の宇都宮クリテリウム(市街地に設営したクローズドコースを周回して競う形式のレース)で逃したリーダージャージも奪還した。

 昨年春の来日以降、これらのレースで圧倒的な強さを披露したことから、我々はともすれば彼の脚質について、「クライマー」という印象を抱きがちだ。だが、ホセにそのことを訊ねてみると、自分自身では「特にクライマーだと思っていない」と、ややはにかんだ様子で、穏やかな笑みを浮かべつつ答えた。

「典型的なクライマータイプだとは思っていないよ。どちらかといえばクライマーの資質はあるかもしれないけれど、だからといって、タイムトライアルも別に苦手なわけじゃないからね。でも、スプリンターではないことは確かだろうね」

 日本のトップクライマーたちをあっさりと引き離してしまう脚力を備えているものの、レースの本場欧州では、このレベルのコースで速さを見せた程度ではクライマーと呼ぶに値しない、ということなのかもしれない。穏やかで温厚な性格のホセは、もちろん、そのような挑発的な表現をするわけではないけれども......。

 日本人は一般的に、スペインなどの南欧諸国の人々に対し、「陽気でおおらか、細かいことを気にしない明るい性格」を想像しがちだが、おそらくホセのキャラクターはその対極にある。真面目で謙虚、落ち着いた話しぶりの温厚な彼の人柄は、ある意味では日本人以上に日本人的......と言ってもいいだろう。

 彼の言葉の端々からも、その誠実な人柄がよくうかがえる。

 たとえば、伊吹山で2年連続して圧倒的な速さを披露できる理由を訊ねてみると、彼はこんなふうに回答する。

「苛酷なレースになると、僕は自分の能力以上のものを発揮するために全力を尽くすんだ。伊吹山はその典型的な例だと思う。ヒルクライムレースだから、チームでの戦略的な集団の駆け引きより、ひたすら単独で自分の力を全開にしていけることも、伊吹山で2年連続の勝利を収めることができた大きな理由だと思う」

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