【自転車】片山右京「チームを買収して強くなっても意味がない」 (3ページ目)
「チームを買いました、勝ちました、終わりました……では、意味がないんですよ。人間を育てて、本当の意味での強い集団を作りあげていくためには、強くあるためのフィロソフィ(哲学)を内部で蓄積し、次の世代へ継承してバトンタッチしていける組織作りが必要なんです。そして、それを実現するには、大量の人数の選手が、組織の中で健全なライバル意識をもとに競争していく環境を整えなければならない。僕たちにはまだない、そういったものを見せてくれたポッツァートやマンセボら一流選手とのUCIレースは、非常に価値のある戦いでした」
今週末(6月27日~29日)には、岩手県の八幡平で全日本選手権が開催される。優勝した選手は、その証(あかし)として日の丸をあしらったナショナルチャンピオンジャージを着用する。「日本で一番速く強い選手」を決めるこのレースのために、欧州のプロツアーチームで戦う別府史之(トレック・ファクトリー・レーシング/アメリカ)も帰国し、参戦する。
2012年にこの八幡平で行なわれたレースでは、当時アルゴス・シマノに所属していた土井雪広(現TeamUKYO)が優勝した。だが、大分県で開催された昨年は、新城幸也が優勝して土井からチャンピオンジャージを奪取した。そして今年、新城は当初、主催者発表のスタートリストに名前が掲載されていたが、7月のツール・ド・フランスに専念するという理由から今回の全日本選手権への参戦を見送ることになった模様だ。
今年の開催地は、一昨年と同じ八幡平。このコースで勝って、もう一度、土井にチャンピオンジャージを着させてやりたいと、TeamUKYOのキャプテン狩野智也は言う。
「土井に、もう一度チャンピオンを獲ってもらいたい。2年前に全日本チャンピオンを獲得したときと同じコースだから相性はいいはずだし、意外とチャンスは大きいんじゃないかと思います」
監督の片山も、もちろん、思いは同じだ。
「できれば土井に2回目のチャンピオンになってほしいけれど、別府君や宮澤君(崇史/ヴィーニ・ファンティーニ・NIPPO・デローザ)、増田君(成幸/宇都宮ブリッツェン)、清水君(都貴/ブリヂストン・アンカー)など、ライバルは強豪揃いなので、厳しい戦いになるでしょう。ウチからは、アンダー23で全日本優勝経験のある平井栄一や、成長ナンバーワンの山本隼も参戦するので、面白い戦いができると思いますよ」
この週末の全日本選手権は、土井、別府といった経験豊富な強豪選手たちの激しい戦いと同様に、若い世代が彼らにどこまで肉迫できるのかを見定める絶好の機会になるだろう。
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