【自転車】片山右京「世代間ギャップ。若手を育てる難しさ」 (2ページ目)

  • 西村章●構成・文・写真 text & photo by Nishimura Akira

 2013年のTeamUKYOで言えば、チームのエースは、土井と同じくこの年に移籍してきたスペイン人選手のホセ・ビセンテ・トリビオだ。それ以外の選手は、彼を勝たせるためのアシストという位置づけである。レースの戦況によっては、土井がセカンドエース的な立場になることがあったとしても、基本的にはキャプテンの狩野智也以下全員が、ホセを支え、彼を勝たせるために全力を尽くす。

 前年まで欧州のプロツアーチームで戦ってきた土井は、2013年のTeamUKYOの選手たちにも、当然のように高い水準を求めた。

「『そんなぬるま湯のようなことをやっていても強くならないよ』『そんなレベルじゃとてもプロとはいえないな』と、厳しいことばかり言ってたら、みんな辞めていっちゃった(笑)。僕らも先輩たちからそんなことをよく言われて、表面上は従いながらも、内心では『絶対こいつらには負けねえ......』と思って練習してましたけど、どうやら今の子たちには、そのやり方ではダメみたいですね。僕もそれを、去年1年で学びました。だから今年は、すこーし、去年よりも優しくしてます(笑)」

 狩野も、若手選手の教育について、土井と似たような印象を述べている。

「僕らにしてみれば、やらなきゃならないことが山のようにあるから、伸びしろのない子や、こりゃダメだと思った子は相手にしない。つまり、何か言われるのは期待されている証拠なんだけど、今は『なぜそういうことを言うのか』という理由も説明しないと、ただ頭ごなしに怒っているだけ、と受け取られてしまう」

 彼らが苦笑しながら話す、このような教育の難しさは、おそらくどの世界にもある世代間ギャップのようなものなのだろう。

 狩野はチーム最年長だけに、その指導方針や考え方からは、懐(ふところ)の深さがうかがえる。

「悪い面ばかり見ていてもしようがない。いいところを見極めて伸ばすのがプロだし、協調性を持ってコミュニケーションを取らないと、レースなんてできないですからね。うまく理解してもらうことがチームのためだし、僕らのためにもなる。だから、年代によって話し方や接し方を変えながら、自分自身も毎日勉強になってますよ」

 土井は、自分の走りを見せることが彼らの刺激にもなる、と話す。

「たとえば、僕や狩野さんについてこようとしたら、吐くまで自分を追い込むことにどうしてもなってしまう。そういうところから、彼らなりに、『このキツいインターバルにも、いつか慣れるのかな』と考えると思うんですよ。自分で考えて質問して、そして実行に移す。そういう課題を自分で見つけることが重要で、それをこちらから言うと、ただやらされるだけの練習になってしまう。そのバランスをすごく大事にして、トレーニングに活かしています。だから、今年は皆、強くなってますよ。21歳や22歳の彼らに強くなってもらわないと、TeamUKYOという存在が価値を持たなくなってしまいますからね」

2 / 3

厳選ピックアップ

キーワード

このページのトップに戻る