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【新車のツボ27】
アルファロメオ・ジュリエッタ 試乗レポート (2ページ目)

  • 佐野弘宗+Sano Hiromune+●取材・文・写真 text&photo by

 ジュリエッタはステアリングを切った瞬間に、水平姿勢のままカッキーンと曲がる。限界はとんでもなく高い。現在搭載されている170psや235ps程度のエンジンでは運転になんのコツもいらない。ステアリングを切れば切っただけ正確に走る。ボディもビックリするくらいガッチリ。内装のスイッチ類にも「ポロッと取れちゃうかも」みたいな伝統の愛嬌(笑)が微塵もなくなっている。

 かつてのアルファロメオは、ボディやハンドリングはよくも悪くもフニャッとした感触で、コーナリングの姿勢変化も大きかった。そういうところが融通のきかないドイツ車好き(失礼!)には頼りなく思えたんだろう。しかし、そういう独特のクセをうまく利用して、クルマのツボを刺激する運転のコツを体得すれば、かつてのアルファロメオは「こんな感じでイイっすかダンナ?」と乗り手の深層心理まで読み切ったように以心伝心、自由自在に操れた。スピードは速くなくても、とことんフレンドリーだった。

 エンジンやトランスミッションもそうだった。音だけはやけに盛大で官能的だが、数字で測れる性能はたいしたことない......がイタリア製パワートレーンの常識だったが、ジュリエッタのそれは正反対。グループ内の「フィアットパワートレーン・テクノロジー社」が開発したエンジンやトランスミッションは世界屈指のハイテクで、仕事はとにかく律儀で効率よく、エコ性能も世界最先端レベルだ。

 考えてみれば、アルファロメオを含むフィアットグループは日本でいうと三菱グループ以上の存在で、それこそ電気製品から宇宙開発まで、イタリアの科学工業技術のすべてを牛耳っているといっても過言ではない。そんなフィアットが本気になれば、VWやBMWをアッといわせるくらい簡単なのかもしれん。

 というわけでジュリエッタは、アルファロメオあるいはイタリア車のイメージをがらりと塗り替えるターニングポイントになる可能性が高い。この内容と品質と性能、そしてこのデザインとブランドイメージで、VWゴルフとBMW1シリーズの中間くらいの価格設定なのはお世辞ぬきで魅力的である。

 ただ、ヘソ曲がりでアマノジャクのワタシの本音としては、あまりにスキのない優秀な機械になったアルファロメオに複雑な気持ちなのも事実である。クルマも女性も「ちょっとオッチョコチョイ」がワタシのツボだから......って、気持ち悪いシメですみません。

【スペック】
アルファロメオ・ジュリエッタ・コンペティツィオーネ
全長×全幅×全高:4350×1800×1460mm
ホイールベース:2635mm
車両重量:1400kg
エンジン:直列4気筒ターボ・1368cc
最高出力:170ps/5500rpm
最大トルク:2500Nm/2500rpm
変速機:6速DCT
10・15モード燃費:――km/L
乗車定員:5名
車両本体価格:358万円

著者プロフィール

  • 佐野弘宗

    佐野弘宗 (さの・ひろむね)

    1968年生まれ。新潟県出身。自動車評論家。上智大学を卒業後、㈱ネコ・パブリッシングに入社。『Car MAGAZINE』編集部を経て、フリーに。現在、『Car MAGAZINE』『モーターファン別冊』『ENGINE』『週刊プレイボーイ』『web CG』など、専門誌・一般紙・WEBを問わず幅広く活躍中。http://monkey-pro.com/

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