【新車のツボ26】
トヨタ・アクア 試乗レポート

  • 佐野弘宗+Sano Hiromune+●取材・文・写真 text&photo by

 トヨタの新しいハイブリッド小型車のアクアは、昨年末の正式発売時点で予約受注がすでに6万台!(月間販売目標は1.2万台)、納車は4ヵ月待ち......という。年初からこれだけの勢いなら、アクアがプリウスとフィットという2強をブチぬいて、2012年の国内ベストセラーに輝くことはほぼ間違いない。

 国内販売では一昨年までトヨタ・プリウスが独走していたが、昨2011年はホンダ・フィットが猛追している。その理由は簡単で、フィットにハイブリッドが登場したからだ。フィットハイブリッドの燃費はプリウスにこそ一歩ゆずるものの、プリウスをのぞけばトップ級。しかも価格は159~233万円(ワゴン版シャトルを含む)とプリウスより安めで、排気量が小さいので自動車税も安い。価格と維持費のトータルコストでは、フィットハイブリッドはプリウスに負けていないのだ。

 ......ってなことを考えると、そこに割って入るアクアが今年のベストセラーの座をかっさらう可能性は、かぎりなく高い。

 アクアのボディサイズはフィットと同等と考えていい。そういう小さくて軽いボディに、プリウス用を改良したハイブリッド機構を積むアクアは、プリウスを凌駕する10・15モード37.0km/Lという超低燃費(最も優秀なLグレードだと40km/L!)をうたう。そして169~185万円という価格設定は、えげつないくらいフィットハイブリッドに近い。

 プリウスより燃費がよくて値段はフィットハイブリッドなみ......だから、少なくとも「お得か?」という点で、プリウスもフィットハイブリッドもアクアの敵ではない。

 ところで、この連載はワタシの独断と偏見、そして偏愛だけでオススメグルマを決めている。これまでも世間的には不人気車ばかり(失礼!)を取り上げてきた。放っておいても売れるアクアをここでオススメするのは、正直いって、ちょっと躊躇があったりもする。

 ただ、どうしてもアクアは取り上げたかった。このクルマはトヨタの下請け自動車メーカーである関東自動車工業の岩手工場で生産(震災前から決まっていたことだが、見事に予定どおりに操業開始!)される。アクアが売れるのは確定だが、せっかくなら売れに売れまくって、東北を元気にしてもらいたい。

 それだけではない。アクアは発売前にウワサされていたような、ただの「プリウスの小さくて安い版」ではない。小さなボディでも広い後席やトランクを確保するために、プリウスではシート背後の床上にある大型バッテリーを後席シート下に移した。また、エンジンルーム内のメカも「そこまでやるか!?」というくらい低い位置に集中させている。

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