上村彩子アナが甲斐拓也に聞く。恩師・野村克也から伝授された極意とは (3ページ目)

  • 山本雷太●撮影 photo by Yamamoto Raita, Sankei Visual

『S☆1』で最初におふたりの対談を行なったのは2018年のシーズン前でした。野村さんは、野球に真摯に取り組む甲斐選手の姿勢に「これはソフトバンクの天下が続くな」とおっしゃっていたことをよく覚えています。

 その対談で、2017年のソフトバンクが日本一になった日本シリーズのことを質問されると、甲斐選手が「良かったことより後悔することのほうを覚えています」と、ある一球のことを話しました。ヤフオクドームでの第二戦の6回、森投手がDeNAの宮崎選手にホームランを打たれた時、甲斐選手はインコースへの真っ直ぐを選択しました。前の試合からの繋がりを考えての選択だったのだそうですが、「アウトコースに行けばよかった」と振り返ったのです。克明に覚えて反省している甲斐選手に対して野村さんは、「その悔しい思い、辛い経験がキャッチャーのエネルギーだ」と、甲斐選手の性格や考え方についても賞賛していました。2回目の対談をした時も、野村さんは甲斐選手のことをベタぼめ。本当に好きな選手だったんだと感じます。

 野村さんからさまざまな技術や考え方、キャッチャーとしての極意を授けてもらった甲斐選手は今、後輩キャッチャーへのアドバイスも積極的にしています。キャンプ入り前の自主トレでは、2年目の海野隆司選手にキャッチングからスローイングに移行するときの足の捌き方を熱心に指導していました。これは野村さんも太鼓判を押していた技術です。

「僕はただ伝えただけで、教えるなんてものではないないですよ」と甲斐選手は謙遜していましたが、自分が時間をかけて苦労して身につけた技術をライバルでもある後輩に惜しみなく伝えるのは、なかなかできることではないと思います。

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