世界記録よりもメダルを。競歩・鈴木雄介選手がこだわる調整の極意 (3ページ目)

 それに対して、世界記録は、誰かが塗り替えればすぐに過去のものになってしまう。でも、メダルとそれを獲得したときの喜びと感動は残る。鈴木選手は、記録だけでなく、記憶に残り続ける瞬間も追求しているのだなと思いました。

「世界記録は、練習をしっかり積めば出せるもの」と話す鈴木選手がいちばんこだわっているのは、「反則のないきれいな歩型で歩く」こと。実際、競歩を始めた中学生の頃から今まで、一度も失格がありません。

「たとえ優勝しても、他の選手や見ている人から汚い歩き方と言われたり、1回でも警告(歩型違反を示す審判のカード)をつけられたら意味がない。完璧な優勝、完全勝利がしたいんです」

【競歩ルール】
競歩は、両足が同時に地面から離れることなく歩き、前足は接地の瞬間から垂直の位置になるまで真っ直ぐ伸びていなくてはいけない。
前者の反則が「ロス・オブ・コンタクト」、後者は「ベントニー」。
世界陸上や五輪の審判は、レベル3の最高位の国際審判で構成され、主任を含めて9名。1国から2名以上が任命される事はない。通常は1周2kmの周回コースで行なわれ、異なる審判3人に反則を示す赤カードを出された選手は失格になる。

 そう語ってくれた鈴木選手の歩きを見ていて、私が子どものころに習っていたクラシックバレエの『白鳥の湖』を思い出しました。水面を優雅に進む白鳥が、水の中では足を激しく掻き続けているように、バレリーナも上半身は優雅に動きながら、足はつま先立ちで細かく動きます。そのとき、上体はブレず全身の上下動も少ない。

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