福西崇史が「絶対に止められない」と言うデ・ブライネの超絶テクニック。その動きの詳細を解説 (2ページ目)

  • 松岡健三郎●取材・文 text by Matsuoka Kenzaburo
  • photo by Matsuoka Kenzaburo

◆モドリッチがユニークなプレーを成功させる理由。ものすごい空間認知の中身>>

 しかも、この足ワザはドリブル中に「パスを出そうとして、出さない」というフェイントなので、止まった状態から仕掛けるよりも相手の反応は大きくなります。一方でこちらの動きは小さくて済むので、すぐに次のタッチや動き直しがしやすい。だから、パスの前だけでなく、シュートする前でも同じように使えると思います。

 サッカーでは、何か先にアクションを起こすことで、こちらが優位になるケースが多いです。こうして先にアクションを起こす足ワザが目立つのが、デ・ブライネの特徴だと思います。

 もう一つ、動きながらのプレーだと「バックステップ&プッシュ」がおすすめです。パスを受ける前にバックステップして、自分の「間」をつくる足ワザです。

 向かってくるボールに対して、バックステップして相手との距離感を保ちながら、自分がプレーする時間とスペースをつくります。ボールを受けた時には何でもできる、余裕がある状態になります。

 状況やタイミングにもよりますが、目の前の相手をかわしやすくするには、一旦ボールを止めるのもポイントです。止めることで相手をより引き出して、相手の動きを見てから右に行くのか、左に行くのかを見極めて次のボール運びができます。

 また、他の味方選手が動く時間もでき、自分はそれを見極めることができるので、味方がタイミングよく走り出していればダイレクトでパスも出せます。しかも、これはサイドだけでなく、中央のエリアやゴール前など、どの場所でも使えるテクニックです。

 視野も広がるし、パスを出せるアングルも広がるので、この「バックステップ&プッシュ」はとてもいいコントロールワザですね。

 デ・ブライネはもちろん、モドリッチもアンドレス・イニエスタも同じようなプレーをします。中盤の選手のスタンダードなプレーになっていますから、同じポジションの選手はぜひチャレンジしてみてください。

ケビン・デ・ブライネ
Kevin De Bruyne/1991年6月28日生まれ。ベルギー・ヘント出身。05年からヘンクに所属し08年にトップチーム昇格。12年にチェルシー(イングランド)へ移籍したが、ヘンク、ブレーメン(ドイツ)へレンタル移籍しプレー。13年にようやくチェルシーでプレーすることになるが、レギュラーには定着できず、14年頭にヴォルフスブルク(ドイツ)に移籍すると才能が開花。2014-15シーズンはドイツ年間MVPを受賞した。15年に現在のマンチェスター・シティ(イングランド)に移籍すると、多くのタイトル獲得に貢献。年間MVPをこれまで3度獲得している。ベルギー代表ではU-18から各年代別代表に選出されつづけ、10年にフル代表デビュー。14年ブラジル、18年ロシアW杯、16年、21年のユーロに出場し、チームの攻撃をけん引しつづけている。

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福西崇史
ふくにし・たかし/1976年9月1日生まれ。愛媛県新居浜市出身。新居浜工業高校から95年にジュビロ磐田入り。ボランチのポジションで活躍し、多くのタイトルを獲得。チームの黄金期の主力としてプレーした。その後、FC東京、東京ヴェルディでプレーし、09年に現役引退。J1通算349試合出場、62得点。日本代表では02年日韓W杯、06年ドイツW杯に出場。国際Aマッチ64試合出場、7得点。現在は解説者として活躍中。

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