ユニクロがスウェーデンのオリパラ代表団にウェア提供「嘘のような本当の話」から始まった契約と信頼関係を築いた現在地 (3ページ目)
こだわりは「優雅さ」
来年に迫ったミラノ・コルティナ冬季オリンピック・パラリンピックの公式ウェアに関しては、2年半以上の歳月をかけて丁寧に話し合いを重ねて作り上げてきた。今回のウェアのコンセプトは、Grace. Strength. Unity(優雅さ。強さ。団結。)。その思いを勝田氏は語る。
「スポーツには厳しさや激しさの印象がありますが、今回とくにこだわったのが、グレース、優雅さの部分です。ジョン・F・ケネディがよく使っていたフレーズ『グレース・アンダー・プレッシャー』という言葉どおり、まさにスポーツの現場ではプレッシャーがありますので、そんな時こそ優雅さを大切にする。誰よりも苦しい時間を過ごしてきたからこそ、逆に本番では優雅に、そして勝利を手にする。そんな話をスウェーデンチームとしてきました。
それを表現できる色としてネイビーを取り入れました。これはパリ大会から採用している色ですが、チームのスピリット、精神的な部分を表現するために今回もデザインをしました」
開会式・閉会式のウェア(左)とメダルセレモニーのウェア(右) ©スウェーデンオリンピック委員会 これらのコンセプトのもと、デザイン性だけではなく、機能性も極限まで昇華させた。過去大会よりもさらに快適なウェアを開発するために、モニターテストやアスリートからの声をもとに素材を改良して、ミリ単位でフィッティングを調整。
吸湿発熱・保温機能を持つ『ヒートテック』や、暖かさで包み込む機能性中綿『パフテック』など、ユニクロを代表する⾼機能素材に加え、⾼レベルの防⽔性、透湿性、低結露性を実現した東レの素材『Dermizax®』(ダーミザクス)を、開会式・閉会式のジャケットとパンツに採⽤するなど、冬の厳しい気候にも対応できるように品質を高めた。
スウェーデンから高い関心を寄せられてきたサステナビリティの取り組みについては、温室効果ガス排出量の少ない素材の使⽤割合を、前回の北京大会の約33%から約42%に大きく向上させ、リサイクル中綿も採用。また原材料⽣産に関わる温室効果ガス排出量の削減にも成功した。
さらに商品ラベルに⼆次元コードを記載。それをスマホなどで読み込むことで製品原産地や素材情報、着⽤後の送付先にアクセスできるようにするなど、サプライチェーンの透明化、情報開示も行なっている。
今回ユニクロが提供するウェアは、開会式、閉会式、メダルセレモニー時のウェアだけではなく、移動時、トレーニング、メディア対応、選⼿村で過ごす時など、あらゆるシーンに対応するLifeWear コレクションに加え、フリースタイルスキー(ビッグエア・スロープスタイル・モーグル)、スノーボード(ビッグエア・スロープスタイル)、カーリングの競技ウェアと幅広く、全部で約200アイテムにのぼるという。
さらに、「スノーブーツは北京では提供していませんでしたが、ぜひユニクロで作ってくれないかということで作りました」とスノーブーツ、スニーカーも開発して提供している。
トレーニングウェア&シューズ(左)とモーグル競技のウェア(右) ©スウェーデンオリンピック委員会
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