元騎手・武士沢友治が語る競馬学校の試験と訓練 騎手を目指す若者達には「どんどんチャレンジしてほしい」とエール
騎手からJRA競馬学校の教官となった武士沢友治氏
教官として濃密な1年を過ごす
28年という長きに渡り競馬の騎手として活躍してきた武士沢友治氏が、2024年3月に引退した。「馬と一緒に育って結果を出すというスタンスでやってきて、ジョッキー冥利に尽きる現役生活だった」と振り返るように、厩舎を含めさまざまな関係者と一丸となって勝利を目指す姿は、多くの競馬ファンの共感と称賛を集めていた。
「一頭の馬に携わっている人は相当数いて、馬は当然ですが、人間とのつながりもすごく大事なことです。ジョッキーひとりでは何もできないので、みんなにはとても感謝しています」
そう語る武士沢氏は、約1年前の4月に中央競馬の騎手を養成する機関「JRA競馬学校」の教官に就任した。騎手としての実績に加え、馬を愛し、人への感謝を忘れない武士沢氏の採用はまさにうってつけの人事だった。
競馬学校には、騎手を目指す「騎手課程」と厩舎スタッフを育成する「厩務員課程」があるが、武士沢氏はこの1年間、厩務員課程に重きをおきながら騎手課程も見るという多忙な毎日を送ってきた。「内容の濃い1年だった」と言うように、学校での実技や学科、厩舎作業に至るまで、生徒のそばであらゆることを吸収してきた。
目覚ましいフィジカルの向上
自らもこの競馬学校で学び、いち騎手として巣立った武士沢氏は、現在の生徒について高く評価している。
「私たちの時代と違い、トレーニング機器も最新のものに変わり、専門のトレーナーもいます。バランスボールやトランポリンを使ったりして、フィジカルを相当強くしているので、そこはすごいなと感じています」
現在騎手課程では、騎手の動きを徹底的に研究し、最も効果的に筋肉を鍛えられるようなトレーニングメニューを専門のトレーナーの指導の下で実施している。筋肉量を単純に増やすのではなく、体幹を鍛えつつも、自分の思いどおりに体を動かせるようにすることで、騎乗のベースづくりを行なっている。
武士沢氏は日々努力を重ねているそんな生徒をつぶさに観察し、「何か困っているな、悩んでいるなという生徒がいれば、こちらから話すようにしている」と積極的にコミュニケーションを取るように心掛けているという。
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