「地球に優しい株式投資なんてある?」投資教育の授業を受けている高校の野球部生徒がSDGsについて考えた (3ページ目)

  • 鈴木雅光●構成 text by Suzuki Masamitsu
  • はまのゆか●絵 illustration by Hamano Yuka

【エコと利益、どっちが大事か】

奥野「SDGsやESGを重視するのは結構だけど、利益を度外視してまで、とは思えないなあ。

 企業の利益とは『顧客・社会の問題解決の対価』だという話は以前にもしたし、これはいつも話している『お金はありがとうのしるし』というお金の原則とも整合的だよね。そういった顧客・社会に付加価値を提供する企業のオーナーになって、その企業があげてきた利益をシェアすることが株式に投資するということなんだ。だから株式のことを『Stock』と言うのは前回話したところだけれど、『Share』とも言うんだ。面白いでしょ? 法的には、みんなが思っているような『Gamble』ではないんだよ。

 そして、そういった顧客・社会の課題を解決する企業があげてきた利益をシェアすることで株主が儲かるということは、結果的に、社会も少しずつよくなっているということなんだ。それはそうだよね。企業の利益は顧客・社会の問題解決の対価なんだから。実はこの『利己』と『利他』が自然と長期的に融合するという概念こそが、資本主義の根本であり、長期投資の意義なんだ。

 SDGsやESGを語る人は、どことなく利他の部分を強調したがるんだけど、それは、投資を、短期的かつ利己的な行為だと考えているからじゃないかな。確かに、短期的な投資はどこまでいったって、利他とは融合しないからね。しかし、長期投資においては、そうじゃなくて、ESGなんて言葉を強調しなくたって、EにもSにもGも、普通にビジネスの世界で生きている市民であれば当然のことであって、わざわざ『ESG』を強調されると、かえって訝(いぶか)しんでしまう。

 だから、基本的には由紀さんが言うように、SDGsやESGを重視しながらも、しっかり利益をあげている企業であることが望ましいんだろうね。

 それに、表向きではエコに配慮しているように見せかけていながら、実は問題の根本的な解決につながっていないことって、結構あるんだよ。

 たとえば、日本の飲食店でストローをプラスティックから紙製に切り替えたとしても、隣の国が物すごい量の石炭を燃やして火力発電を行なっていたら、地球規模で見たらあまり意味がない。

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