投資教育を受ける高校の野球部生徒が考える「マネージャーの役割」 変わりつつある日本の企業で行なわれている面白い試み (4ページ目)

  • 鈴木雅光●構成 text by Suzuki Masamitsu
  • はまのゆか●絵 illustration by Hamano Yuka

 すでにボーナスの半分がWillで支払われていて、社員寮の寮費とか、ジムなどの福利厚生とか、お昼ご飯代なんかも、このWillで支払うことができる。まさに通貨なんだけど、単にWillを稼いでお金持ちになろうってことではなく、社員のモチベーションを高めたり、仕事のムダをなくしたりもできるんだ。

 Willは部門の成績によって支払われ、さらにその部門で働いている社員の成績に応じて、各人に付与されるから、その部門が儲かっていなかったら、どれだけその部門で優秀な社員でも、付与されるWillは少額になってしまう。

 だから、社員は自分の成績を上げることはもちろんだけど、自分が属している部門の業績が上がるように努力するようになるし、本当に必要のない部門だとWillが受け取れなくなるから、そういう部署からは自然と人がいなくなって、部門そのものが淘汰されるんだ」

由紀「あまり聞いたことのない社名なんですけど、すごい会社なんですか」

奥野「ディスコは、日本だけでなく世界中に拠点を持っているグローバル企業で、『切る』『削る』が本業なんだけど、ものすごく高い精度でそれをこなせる企業は、世界に2社しかないんだ。だから利益率もめちゃくちゃ高い。

 それはWillを使って徹底的にムダを省き、社員のモチベーションを高めて、お客さんがいない仕事は徹底してやらないように心がけているからなんだと思う。会社として、正しいことをしているんだね。

 こういう組織における管理職の仕事は、勤怠表で社員を管理するなんていう下らないことではないんだろうね。儲けのネタを外部から探すのと同時に、常に内部を改善してムダを省き、大勢の社員を巻き込んでいく。それを一番上手にできた管理職が、ゆくゆくは社長になるっていうことなのかもしれないね」

【profile】
奥野一成(おくの・かずしげ)
農林中金バリューインベストメンツ株式会社(NVIC) 常務取締役兼最高投資責任者(CIO)。京都大学法学部卒、ロンドンビジネススクール・ファイナンス学修士(Master in Finance)修了。1992年日本長期信用銀行入行。長銀証券、UBS証券を経て2003年に農林中央金庫入庫。2014年から現職。バフェットの投資哲学に通ずる「長期厳選投資」を実践する日本では稀有なパイオニア。その投資哲学で高い運用実績を上げ続け、機関投資家向けファンドの運用総額は4000億を突破。更に多くの日本人を豊かにするために、機関投資家向けの巨大ファンドを「おおぶね」として個人にも開放している。著書に『教養としての投資』『先生、お金持ちになるにはどうしたらいいですか?』『投資家の思考法』など。

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