投資教育を受ける高校の野球部生徒が考える「マネージャーの役割」 変わりつつある日本の企業で行なわれている面白い試み (3ページ目)
【変われる会社と変われない会社】
奥野「それはそうなんだけど、たとえば世の中のニーズって、時代の流れとともに変わっていくよね。昔はニーズがたくさんあった製品だったのに、今は見向きもされないものはたくさんある。
ニーズがなくなった製品・サービスを提供している部署はなくすべきだし、それによって仕事がなくなった社員は、その能力を別のビジネスで発揮してもらうように、配置転換していく必要があるんだ。だけど、なぜか組織って、自分の属しているところが永続するように防衛しようとする本能が働くみたいだね。変えること、変わることを徹底的に拒んで、自分たちの組織の存続を守ろうとする。
確かに、ずっと同じことを繰り返して安定した給料がもらえるなら、これほど楽なことはないんだけど、ビジネスってそういうものじゃないでしょ。常に新しい世の中のニーズを探し求めて、新しい製品やサービスを開発して投入していく。そのためには、どのようにでも変化できる柔軟な組織でなければならないし、そこに組織防衛本能は必要ないんだ。逆に、組織防衛本能が強すぎると、倒産してしまうことにもなりかねないんだよ。
由紀「本当にそうなってしまった会社ってあるんですか」
奥野「まずダメになった事例では、たとえばアメリカのコダックというフィルムメーカーかな。デジタルカメラの普及によってフィルムの需要が無くなり、2012年に倒産しちゃったんだけど、実はデジタルカメラの試作品を世界で初めてつくったのは、コダックなんだよ。コダックのフィルムで生活している人があまりにも多くて、ビジネス転換ができなかったんだね。
鈴木「逆にそうならない組織をつくっている会社っていうのは?」
奥野「実は組織の硬直化を防ぐために、面白い試みをしている企業が、日本にあるんだ。ディスコという会社で、半導体や電子部品などのモノを切ったり、削ったりするための産業機械を製造しているメーカーだね。
この会社は面白い試みをしていて、会社が稼いだ利益の範囲内で「Will」という社内通貨を発行し、それを社員に付与しているんだ。
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