投資について学ぶ高校の野球部生徒の疑問。「就職して社長を目指す」と「起業して社長になる」のはどちらがいいのか
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集英高校の野球部顧問を務めながら、家庭科の授業で生徒たちに投資について教えている奥野一成先生から、経済に関するさまざまな話を聞いてきた3年生の野球部女子マネージャー・佐々木由紀と新入部員の野球小僧・鈴木一郎。前回は、最近はドラマのテーマにまでなっている「スタートアップ」について、さまざまな角度から話を聞いた。なかでも、京都大学アメリカンフットボール部を日本一の座に導いた水野彌一元監督の「まず飛び込んでみろ」の教えに、深くうなずくふたりだった。
とはいえ、夢はすぐに現実に引き戻される。野球部の練習前のひととき、部室で鈴木が由紀にぐちるのだった。
鈴木「両親に『起業しようと思うんだけど......』と言ったら、『宿題終わったのか』だって。父さんはずっとひとつの会社に勤めているサラリーマンだから、イメージが湧かないのかもしれないな」
由紀「うちのパパも一緒よ。サラリーマンでも、たとえば国際経験が必要なことはわかっているから、海外留学とかは反対しないの。でも『会社を作る』なんて言ったら、倒れちゃうかも。私たちにしたって、何となくいい成績をとって、なるべくいい大学に行って、有名な企業とかに入れたらいいなという考え方から、脱却できているとは言えないでしょう」
鈴木「ですよね」
由紀「『猛烈に働くサラリーマン』はさすがに古いと思うけど、そもそも、いい会社に入って努力して社長を目指すって、そんなにダメな生き方なのかしら?」
「ダメだとは言ってないよ」と言いながら、奥野先生が部室に入ってきた。
「ただ、ちょっと比較をしてみようよ。右手がいい会社に入って社長になった人。左手が起業した人だとしようか。右手の人は、大会社で大成功を収めても、日本では収入として10億円をもらえる人はまれでしょう。でも、左手の人はうまくいけば桁が違う収入を得られるよ」
鈴木「それって、うまくいけば、じゃないですか?」
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