学校単位の部活どころか高校そのものがなくなる? 先が見えない日本の少子化問題を考える

  • 鈴木雅光●構成 text by Suzuki Masamitsu
  • はまのゆか●絵 illustration by Hamano Yuka

この記事に関連する写真を見る奥野一成のマネー&スポーツ講座(14)~少子化と日本経済

 前回は、集英高校の野球部顧問を務めながら、家庭科の授業で生徒たちに投資について教えている奥野一成先生から、「教育という投資」について話を聞いた3年生の野球部女子マネージャー・佐々木由紀と新入部員の野球小僧・鈴木一郎。自分たちがまさに受けている教育も、国の制度が大きく関わっていることを思い知った。

 野球部の練習が始まる前のひととき、奥野先生と鈴木を前に、今回も由紀が、国の政策と深く関係する大問題を提起した。

由紀「インターハイで部活の連合チームを認めることが検討されているというのがニュースになっていたけど、大阪の友達は、通ってる高校自体がなくなっちゃうかもしれないんだって」
鈴木「どういうこと?」

 大阪府では、橋下徹知事(当時)が教育委員会と激論の末に推し進めた「教育改革」の結果、3年連続で定員割れした改善の見込みのない府立高校を「閉校」、いわゆる「廃校」の検討対象にする「条例」を制定。教育委員会は再編整備計画に基づき統廃合を進め、今回、10年間で府立高校(旧大阪市立高校含む)17校の廃校を決定した。

奥野「大阪だけの問題じゃないよね。少子化は日本全体の問題。いまの18歳は1学年約120万人いるけど、若くなるほど減っていって、0歳だと80満人を割った。学校の数が減っていくのはむしろ当然なんだ」
由紀「ちょっと前に、世界の人口が増えていて80億人を突破したっていうニュースがあったけど、日本は違うんですね」
鈴木「人口が減ると何が悪いんですか?」

奥野「人口、特に『生産年齢人口』と言われる15歳から64歳までの人口が減っていくと、世の中的にはさまざまな弊害が生じてくるんだよ。

 最近は70歳まで働く時代なんて言われているから、生産年齢人口の上限が64歳というのも、やや時代遅れなのかなと思うんだけど、要は生産年齢人口とは、生産活動に従事しうる年齢の人口のことなんだ。大学を卒業して新卒入社すると、まあだいたい22歳くらいだけど、中学を卒業して社会人になれば15歳。だから15歳からが生産年齢人口の入り口である一方、定年で会社を辞めるのが満65歳と規定している会社が多いので、出口は64歳。要するに、働いて何かを生産できる人たちの群が、生産年齢人口になるんだ」

鈴木「僕らも生産年齢人口ってわけですね」

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