学校単位の部活どころか高校そのものがなくなる? 先が見えない日本の少子化問題を考える (3ページ目)

  • 鈴木雅光●構成 text by Suzuki Masamitsu
  • はまのゆか●絵 illustration by Hamano Yuka

【こうなることは1970年代からわかっていた】

奥野「正直、遅きに失した感はあるんだけどね。何も手を打たないでいると、そのうち日本が人口減少社会になるというのは、1970年代くらいからわかっていたことなんだ。

『合計特殊出生率』って知っているかな?

 簡単に言うと、ひとりの女性が一生の間に産む子供の人数で、日本の場合、2021年が1.30で、6年連続で前年を割り込んでいる。

 ちなみにこの数字は、2.00だと人口が増えもしないけれども減りもしないという状態で、2.10、2.20というように2を超えてくると、人口は増加するんだ。

 逆に、今の日本のように1.30で、2を割り込んだ状態が続くと、人口は減少傾向をたどってしまう。日本の過去の合計特殊出生率を見ると、1950年は3.65だったのが、徐々に低下傾向をたどり、初めて2.00を割り込んだのが1961年のこと。翌年も2.00を回復できなかったんだけど、1963年からは再び2.00を超えるようになったんだ。

 そして、恒常的に2.00を割り込むようになったのが1975年のことで、そこからはずっと2.00を超えることはなく、2021年には1.30まで低下してしまった。

 つまり、日本が人口減少社会になることは、実は47年も前にわかっていたことなんだよ。それなのに、何ら実効性のある手を打たないまま、今日まで来てしまった。明らかに政治の怠慢だと思うよ。

 メディアなどでは、日本が他の国に先駆けて少子超高齢社会になり、人口が減少傾向をたどっている『課題先進国』のような扱いを受けているんだけど、これも実は割り引いて聞いておく必要があると思うんだ。さっき、日本の合計特殊出生率が恒常的に2.00を割り込むようになったのは1975年という話をしたんだけど、実はこれ、日本だけの話じゃないんだ。フランスやスウェーデンも1975年の時点で、合計特殊出生率が2.00を割り込んだんだよ。

 では、今はどうなっているのかというと、2020年時点の合計特殊出生率は、日本が1.33で、フランスは1.82。スウェーデンが1.66なんだ。同じタイミングで2.00を割り込んだのに、日本だけが1.33まで落ち込んでしまっている。なぜこれだけの差が生じてしまったのか。それを日本の政策当局者はしっかり考えるべきだと思うね」

由紀「フランスやスウェーデンはどういう方法を用いて、合計特殊出生率の低下を食い止めたんですか」。
鈴木「ヨーロッパって、移民の人が増えたって言わない?」。

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