高校野球部の生徒が考える資産形成。低金利下の貯蓄は「億万長者への道」につながるのか (3ページ目)
「PL思考」とは?
奥野「PLというのは『Profit and Loss』、つまり損益計算書のことで、企業が1年間に得た収益と、使った経費の差し引きで、最終的にどのくらいの利益が得られたのか、あるいは損失を被ったのかを見るためのものなんだ。だから将来、何らかの形で消費することを目的にして、それに必要なお金を働いて貯蓄する、あるいは投資で増やすというのは、まさに『PL思考』そのものといっていいだろうね。
でも、このように使うために貯める、増やすというのは刹那的であり、資産形成にとって大事な時間軸が全く考慮されていない。本当の億万長者は、そういう考え方をしないんだ。
鈴木「でも、貯蓄や投資って、結局のところ将来、何かにお金を使うためにするものじゃないかな」」
由紀「先生が言う『PL思考』があるってことは、ひょっとしたら別の思考もあるということですか」。
奥野「ふたりともまだ若いから実感がないと思うのだけれども、たとえば80歳になった時、投資しようと思うかどうか。ちょっと想像力を働かせてごらん。『もうそんなに長生きできないから投資、とりわけ長期投資をする意味なんてないよ』って思うかもしれないね。
でも、実は70歳、80歳、あるいは90歳になったとしても、実は投資って必要なものなんだ。
鈴木君が言うように、大半の人は『PL思考』で貯蓄や投資を捉えている。ライフプランで言うと、結婚するお金、子供の教育資金、家を買うためのお金、自動車を買うためのお金、日々の生活費や遊興費など、人が生きていく以上はお金が必要だし、できることならちょっとだけ贅沢もしたいので、お金を貯める、あるいは増やす。
でも、富裕層と言われている人たちは、もちろん消費はするんだけれども、贅沢な消費をするために投資をしているのではないんだ。
富裕層はお金をたくさん持っているから、お金を増やす目的で投資をする必要はどこにもない。ただ、彼らが唯一恐れるのは、自分がこれまでに築いた資産の価値が減ってしまうことなんだ。
たとえば100億円の資産を持っているお金持ちは、100億円を現金で持っているわけではない。現金なんてほんの数%くらいで、残りの大半は、たとえば自分が経営している会社の株式、上場株式、未上場株式、不動産、金、暗号資産、ヘッジファンドなど、実にさまざまな資産クラスに分散して持っている。
なぜそんなことをするのかというと、自分の資産を城に見立てて、敵に攻め込まれたとしても、それを撃退できるようにするためなんだ」
3 / 4