高校野球部の生徒が考える資産形成。低金利下の貯蓄は「億万長者への道」につながるのか (4ページ目)

  • 鈴木雅光●構成 text by Suzuki Masamitsu
  • はまのゆか●絵 illustration by Hamano Yuka

個人にとっての投資の必要性

奥野「最近は世界的なインフレが問題になっているけれども、そのように経済環境が激変したとしても、自分の資産の目減りを最小限に抑えられるように守りを固める。これを『BS思考』と言うんだ。

 ちなみにBSとは『Balance Sheet』で、貸借対照表のこと。これを見ると財務体質が強固なものかどうかが、ひと目でわかる。多くの企業は売上を増やすのと同時に、簡単に倒産しないように、強固な財務体質を築く努力をしているのだけれども、それは個人も同じだよね。破産なんてしたくないから、仕事で稼いだ現金を他の資産に変えて、守りを固める必要がある。

 だから個人でも投資をする必要があるし、自分の財産を守るのに年齢は関係ないから、歳を取っても投資し続けることが肝心なんだ」

鈴木「今、先生が株式や不動産、金といった資産に分散するってことを言いましたけど、これって値段が動きますよね。値段が下がったら、何もしなくても資産が目減りしてしまうことになりませんか」
由紀「私も同感です」

奥野「株式を例に説明すると、株価はあくまでも株式市場での評価であって、企業の本質的な価値から乖離するのは、よくあることなんだ。たとえば期待感が強まれば、本質的な価値に対して株価は割高になるし、失望感が広がれば、本質的な価値に対して株価は割安になる。

 でも、ちゃんと利益が成長していく企業の株式に投資すれば、目先的には期待感や失望感で株価が上下したとしても、やがて本質的な価値を反映して、株価は徐々に上昇していく。

 だから、収入として得た現金をそういう資産に変えておけば、経済環境が厳しい状況になったとしても、資産価値が大幅に目減りすることを避けられる可能性が高まるし、経済環境がよくなれば、自分の所得に加えて、投資している企業の成長に乗じて資産が増えていく。そうなると由紀さんが言う、億万長者への道も近づくかもしれないね」

奥野一成(おくの・かずしげ)
農林中金バリューインベストメンツ株式会社(NVIC) 常務取締役兼最高投資責任者(CIO)。京都大学法学部卒、ロンドンビジネススクール・ファイナンス学修士(Master in Finance)修了。1992年日本長期信用銀行入行。長銀証券、UBS証券を経て2003年に農林中央金庫入庫。2014年から現職。バフェットの投資哲学に通ずる「長期厳選投資」を実践する日本では稀有なパイオニア。その投資哲学で高い運用実績を上げ続け、機関投資家向けファンドの運用総額は4000億を突破。更に多くの日本人を豊かにするために、機関投資家向けの巨大ファンドを「おおぶね」として個人にも開放している。著書に『教養としての投資』『先生、お金持ちになるにはどうしたらいいですか?』『投資家の思考法』など。

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